品川プリンスホテル クラブeX THEATRICAL LIVE 『僕らの千年と君が死ぬまでの30日間』

 下級貴族の妾腹の子光蔭(浜中文一)と、下人として使われる孤児草介(辰巳雄大)、口のきけない不思議な力を持つ少女とわ(菅原りこ)の、千年続く人生ともつれた愛。ふむふむ。浜中のとても緊まった、これ以上ないトーンの声が、キーボード(伊藤隆博)、ドラムス(GRACE)、ギター(大嶋吾郎)の演奏の上に乗り、AKANE LIVのボーカルが巧く嵌って、構成はすごくよくできているし、辰巳もきっちり役柄をとらえ、草介の衷心から声が出てる。

 でもこの芝居を見て私が考えたのは、声の甲高い(アニメ声である)身振りの大きい(アニメ芝居である)少女の、戦略的弱者性みたいなもののことであった。これもさ、「女の人嫌い」の、これまでたくさん作られてきた作品のひとつである。菅原りこの演技は、菅原に由来するのか、演出の鈴木勝秀に由来するのかわからないが、仮に鈴木のものであるとして、(女の子のつくろった声が、そんなに嫌いなんだ…)と改めて驚くのであった。まあ、も一つ言っとくと、「そうしないと生き延びられない局面」が、16歳の娘には確かにある。そこに憎しみを持つ人もいると思うけど、でも「女に生まれないだけまし」なんでしょ。そこ、この時代なら詰めないとね。

 脚本が薄手で、少女漫画のように仕立てられている。と、いうことは芝居しすぎると、「ださく」なる。浜中も辰巳も抑えてねー。辰巳の最後の感情の爆発、よくやっているけど、骨太すぎて、作品の結構が、チョロQみたいにみえちゃうよ。その芝居はここではそぐわない。もっとごっつい芝居にとっといて。この繊細なガラスペンみたいな芝居でやると、造作(ぞうさく)がこわれちゃうから。浜中のひそめた眉も、少女的にはオッケーであるが、どうなんだろうな。私の趣味だが安っぽくなると思う。「モナリザ」、「システィーナ礼拝堂」、ちゃんと美術書買いなよ。もしも菅原りこの芝居が自発的なものなら、そんなに声に寄りかかって芝居しちゃダメ、手の動かし方も煩雑だし、うさんくさい。演出に、戦略的に活用されています。