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L'Equipe vol.1『秋のソナタ』

客席の「外」、ロビーから、くぐもった音でピアノ曲が聴こえる。ちょっと、エヴァの気持ち。

 上手にドアと、燭台を置く小テーブル、下手にもローソク、中央に布で覆われたテーブルと椅子、その後ろに吊り下げられた大きな窓。

 窓の向こうから、エヴァ(満島ひかり)が「中」をのぞく。思いのほか子供っぽい声で、母シャルロッテ(佐藤オリエ)に出した手紙について話し始める。

 エヴァは牧師と結婚し、障害のある妹レナを引き取って暮らしている。シャルロッテは世界的なピアニストで、子供のエヴァとレナに構うことがなかった。エヴァの中には、母親に対するつよい思いが蟠っている。七年ぶりに母と対面したエヴァは、シャルロッテに過去の愛情や恨みを吐き出していく。

 はげしい。エヴァはいつでも「外」にいる、という印象。母親から、ピアノから、愛情から(彼女は誰も愛していないという)、いつもはぐれて一人きりである。それがエヴァの、自分と母の過去を探る原動力となっている。

 なぜ私は一人ぼっちなのか?

 シャルロッテも一人きりであることが徐々に明らかになる。でも彼女は、エヴァと違い、現実と折り合っている。最後に、まるで回転ドアを内と外から押し合って、位置がくるっと入れ替わるように、シャルロッテが外界に出てはぐれ者となり、エヴァはさらに母親を求めながら家の中にのこされる。エヴァのセリフに込められた執念に驚くうち、芝居は終わった。たちの悪い恋愛や、嗜癖のように、エヴァは母親におぼれている。だがそれは永遠に彼女にはわからない。蝶が窓の外を飛ぶのを見るしかなかったレナと同じく、彼女も母親との葛藤の「外」に出ることができないのだった。こわいはなしだったよ。立ちつくす最後のシーンが美しい。効果音が少し大きく感じる。役者は力演。