あうるすぽっと ヨーロッパ企画第41回公演 『あんなに優しかったゴーレム』

 ある町にテレビのドキュメンタリー・チームが現れる。プロ野球選手神崎(酒井善史)の生まれ育った土地で、彼の個人史を振り返るためだ。町はずれには土の巨大像ゴーレムがあり、テレビの人々は驚くが、神崎はナチュラルに懐かしがるだけだ。その上、神崎はさらにナチュラルに「ゴーレムとキャッチボールしたおかげで今の自分がある」と続けるのだった。次々と明らかになる優しいゴーレムの逸話に、テレビクルーは熱くなる。ゴーレムは実在するのかしないのか。

 大変な好青年に会ったような気がするヨーロッパ企画の『あんなに優しかったゴーレム』です。笑わせるのにソツがなく、チャーミングで、気が利いていて、優しい。ただし、上衣のボタンを開けると、そこには二階建ての暗い空洞が口を開けてる、ってかんじだな。この空洞の出方がちょっと薄いよ。神崎の友人ツカモト(土佐和成)の借金のとこ、女将(西村直子)の商売敵の駅前ホテルのくだりが、騒がしく過ぎてしまうからだよね。途中まで、「テレビってなんだろう」と考えたり、芝居や映画に出てくる「記号としてのテレビ」――物見高く、飽きっぽく、権威なのに権威に弱い人々――のことを思ったのに、なんか、終幕で無化されてしまった。笑った。中ではプロデューサー(中川晴樹)のずるい感じが光ってて、他のメンバーも芝居に「奉仕」している。この「奉仕」で、芝居はぴかぴかにきっちり仕上げられてる。そのせいで、他方、つまらなくもあるよね、空洞も影も出にくくなるもん。発展性がない。ひとりひとりのキャラクターに、余ってこぼれてくるものがない。ゴーレムの造型が素晴らしく、動いたらいいなあと思った。土の中の(こわい!)、少女(藤谷理子)の安っぽくかわいい部屋がいい。