劇団民藝 『「仕事クラブ」の女優たち』

 「最後吐いてました、原稿書くのに」(パンフレット、長田育恵)

 そうだろうなー。ただでさえ演劇ってその場で消えてしまうもので、それに消し去りたいとか貧しいとか弾圧とかの条件が加わると、どれほど時代と資料に穴が開くか、想像に難くない。たいへんだったよね。だけど長田育恵、吐いてこんだけ?もっとできるはず。

 あの時代、女優たちが灯火のように抱きかかえ、囲って守り続けた「理想」ってやつ、「恋人」、「仕事」、時々は持ち重りがして邪魔くさく、いらいらと放り出して仕舞いたいと思ったその思いに、リアリティが感じられない。

 終始、言葉が体から、浮いているのだ。若い俳優に昔の思想を解れという方が無理である。脚本に解る仕掛けがほしい。

 昭和七年、築地小劇場は分裂して新築地小劇場となっており、左翼劇場と合同公演を試みる。しかし検閲が厳しく、公演は成功しない。顎の干上がりそうな女優たちは「仕事クラブ」を結成して、クラブ経由の仕事で糊口をしのぐ。

 女優たちの言葉が、喧しく金や理想や演劇を巡って発せられ、混沌としているが、謎のまかないさん延(奈良岡朋子)が出てくると、全てのセリフがプリズムを通る光線のように延にあつまって屈曲し、延が「聴いている」というだけで全ての行動が整理され、芝居の中の芝居を観ているようである。

 怠け者(もっとだらだら怠けていい)の夏目隆二(境賢一)の最後のセリフがとてもよく書けていて素晴らしい。もちろん、役者もよく応えた。

 五十嵐隼人(神敏将)、めっちゃいい役なのにもったいない。ソツなく見たことあるような芝居をなぞっちゃダメ、体が客席向きすぎてる。