2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

明治座 『めんたいぴりり  未来永劫編』

い…逸材?博多華丸を見て仰天する。何よりもその体躯が、子供のころからちゃんとしたもの食べてましたって感じの、ノーブルな気配すらするガタイなのだ。よく分かっている衣装(松竹衣装)の人が、アイロンのかかったシャツと、サスペンダーの附いたズボンを…

赤坂ACTシアター A New Musical 『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

板垣恭一がんばった。日本の演劇が「長らく目を背けてきた」貧困と性差別をテーマに脚本を書き、アメリカに曲の三分の一を発注し演出した。題材はアメリカの19世紀の紡績工場、差別されてきた女たちを主人公とする「現在進行形の」(問題は大して変わってな…

サンパール荒川大ホール 『桃月庵白酒・柳家三三 二人会』

台風の風がびゅうびゅう、近所の蕎麦屋さんは落語会に行く人たちで満員。サンパール荒川、緞帳は古いが座席もトイレも新しくてきれいだ。 幕が上がると、ほいほいほいと軽やかに桃月庵あられが現れてふくふくに盛り上がった黄色い座布団にすっと座る。 「い…

CINE QUINTO シネクイント 『人間失格 太宰治と3人の女たち』

マリアナ海溝。世界で最も深い海溝、深さ一万メートル越え。 太宰と海溝と何の関係があるかと聞かれれば、正直ないわけだけど、太宰を扱うならばマリアナ海溝チャレンジャー海淵くらいの深さに、「傑作への渇望」がないとだめじゃない?この映画で唯一それを…

新宿武蔵野館 『ある船頭の話』

ふーん。オダギリジョー、一撃で日本映画の「なあなあの背骨」折ったね。そのことでオダギリジョーが何としてもこの映画を撮りたかったのが何故か、わかる。撮影クリストファー・ドイル、衣装ワダエミ、音楽ティグラン・ハマシアン。村上虹郎、川島鈴遥の若…

紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA 井上ひさしメモリアル10こまつ座第129回公演 『日の浦姫物語』

1978年、『日の浦姫物語』。杉村春子が「わが子よぉ」というのを見て、「泣いた」と友達にウソを言いました。その当時、「泣けない」「無感動」ってことが自分の中で大きなテーマだったのだ。世界は私と関係なかった。こどもだもん。「近親相姦」という仕掛…

浅草見番 四季の萬会

浅草見番。畳敷きの変形の広間に、座布団が隙間なく並べられ、ひとつひとつに少し秋っぽい半そでの服の観客が座る。皆ぱたぱたとパンフレットや扇子で顔を扇いでいて、後ろから見たその光景は、明治っから変わらないよねー。と言ってしまいそうなくらいだ。…

世田谷パブリックシアター 『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』

主題の短い、展開の多い、不安なヴァイオリンのソロが長く流れ、アナウンスの後、グラナダTVの「シャーロック・ホームズ」のテーマが聴こえる。あ、あれかー。考証に厳しく、女たちの装身具がリアルで、紅茶ポットまですてきな奴。どんなにチャンネル変えて…

日本橋TOHO 『引っ越し大名』

マンガっぽい演技、について考える。一瞬で表情が全然変わる、間が重視され大仰になるあれ。ポップでシュールな芝居に適ってる。時代劇って、戦前のものからもう「現代劇」なので、「時代劇に適わない」ってことは言わない。ただこの『引っ越し大名』には、…

東京芸術劇場 シアターイースト DULL-COLORED POP 福島三部作一挙上演 第一部『1961年:夜に昇る太陽』第二部『1986年:メビウスの輪』第三部『2011年:語られたがる言葉たち』 

「いささかの不安があれば、いくら会社の方針とは言え、肉親を失った私は会社には従わない。何も東電しか勤め先のないわけではないから東電を辞めてもいい」 常磐線の中で、福島双葉町の大学生、穂積家の長男孝(内田倭史)と知り合った謎の男(佐伯=阿岐之…

京都芸術センター 地点『三人姉妹』京都公演

「きゃー」、長い長い、新しく張り替えられた瀟洒なローズウッド色の廊下を歩くと、とおーくの床が、思わぬ具合に軋む。ここは「アンティーク」という言葉がぴったりな元小学校だ。ここで今日、地点の芝居を観るのだ。 絶望したように見える白樺が、舞台天井…

赤坂ACTシアター いのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』

うっかりしてる間にこんな年になってしまって、ふと頭の中を「明日の月日はないものを」という詞がよぎる。(黒澤も使ってたねー) この新感線の『けむりの軍団』を見ていると、それをひしひしと感じるのだった。いまの「い」という言葉と「ま」という言葉を…

DDD青山クロスシアター 『絢爛とか爛漫とか』

昭和初期、一人住まいの裕福な青年古賀大介(安西慎太郎)の居室で繰り広げられる青春の四季の人間模様。かと思ったらなかなか、そんな甘いもんではなかった。 四人の青年が友人として登場し、それぞれ文学と相渉る。この文学(芸術)の存在が、とても大きく…