アマゾンプライム 『マスカレード・ホテル』

 さんまが見つからん。手持ちのタブレットなんかでこじんまり観るからである。大きい画面で観なおすと、た易く彼は現れ、あっさりした大団円に拍子抜けしてもう一度頭から映画を辿る。

 こんなもんじゃなかろー。

 もっと大きい謎々が仕組まれているはず。何かあるはず。例えば指でピースマークを作ったら、勿論指は2本見えるけど、ゆっくり手首を返すと指の位置が重なって1本に見える的な。と焦りながら3回観るが何もない。

 こんなもんだった。謎々なかった。うなだれて電源を落とし、こんなゆるい作品で懸命に働いた役者の人々のことを考える。特に木村拓哉。連続殺人を追う刑事たちが高級ホテルに潜入し、犯人を追う。その一人新田を演じる木村は、どんなひどい台詞も、シチュエーションも、絶対にスルーせず、ラケットをぎりぎりまで伸ばして拾い、「ださくない所」「ベタじゃない所」に打ち返す。ださくベタなこの映画は、実は木村に救われている。老婆の打ち明け話や新田の指導係フロントクラークの山岸(長澤まさみ)の思い出話など、テレビでは許されても『1917』と同じ料金を取る映画では決して許されない処理でありしんみり度である。処理と言えばペーパーウェイトはテレビならではのしつこさで、唯一笑える箇所の散髪シーンは画面のテンポが恐ろしく悪く全く笑えない。さいご、ホテル前にスーツで立つ新田の靴がぴかぴか、っていうのと宇梶剛士の写真がかわいかった。生瀬勝久がホテルの窓から外を眺める一瞬の喜び、小日向文世が客室のソファの背を撫でるところが素晴らしい。木村拓哉、どんなダサいものでも打って「センスある普通」にできることは分かった。自分の好きな色のシャトルでサーブする練習しないと。それは怖いよ。長澤まさみはこのキムタクのセンスをみよ。