座・高円寺 チーズtheater第七回本公演『ある風景』

チケット売り場前の、小さいお知らせ看板に、びんびん反響するスタッフの声を聴いた時から、悪い予感はしていた。この演出の人、聴覚に繊細さを欠く。さーさーという音は「雨」ではなく、「雨の体(てい)」だったし、俳優が舞台から姿を消しているとき聞こえるトイレの流水音も、倒れる音も、車も(今どき重低音)、効果音のセンスが悪いのだ。舞台セットは、生きていたいような、そうでもないような、投げやりな感じに和室とダイニングが設えられている。(問題は籠の鳥が、本物であるとこ。だいじょぶなの?心配だね。)

 突然倒れ、死体となって発見された母(陽子=みやなおこ)の家に、長男鈴木肇(小出恵介)が帰ってくる。そこに、一人の男(松戸俊二)が訪ねてきた。おかあさんの元夫ですといって。

 観ている間、全く退屈しない。キャスト表を眺めて、「多すぎる」と思ったが、全員キャラが立っている。

冒頭のご近所さん近藤(間瀬英正)と肇のやりとりが、急で、深すぎる。「死体を発見した人だから、これくらいいい」ってことだろうか。雑だね。

 中では、鈴木一家のいとこ浩一(池畑暢平)と、肇の旧友奥田(續木淳平)の無神経ツートップが好演している。ていうかさ、脚本に説得力がある。うまく書かれてる。けど、その脚本も、肇の視点はある程度キマッているのに、陽子からの視点が、たとえば座位が立位に変わるように見えなければいけないはずだがそうなってない。これうごかない、うごけないおかあさん――女のはなしでしょ。みえないよ。ゴキブリのシーンも、ちゃんとゴキブリ居るのに、家族の声がうるさすぎる。あと、奥田、友達のお母さんとセクシャルな話するかなあ。肇と柚(蒼大)の寝そべり方が一緒なとこがとてもいい。柚が不貞腐れてものをなげるところで、観客の女の人から「あら…」と声にならない声が出てちょっとおかしかった。家庭劇に参加している。小出恵介、顔だけで会話するところ、もっときちんと詰める。身体に風通っているが、肩が消しゴムみたいに密度高すぎ。