シアタートラム 劇団チョコレートケーキ 『ブラウン管より愛をこめて ー宇宙人と異邦人ー 』

 今日、この芝居初日。特撮ヒーロー番組を作っている「東特プロ」の制作、岸本次郎(林竜三)の第一声が、「東特プロの世界」を召喚するのに失敗してました。ここからしばらく、芝居がすんごいぎこちなかった。それは衣装のせいもある。80年代後半から90年代にかけて、暴風のように流行ったアルマーニ風ダブルのスーツを、二人が着込んでいるにもかかわらず、監督の松村(岡本篤)が、鳥打帽(?)と茶のジャケットを着ているために、時代が、60年代?70年代?80年代?最近?と混乱してしまったのだ。あのねー、ああいうスーツはさりげなく着こなしちゃダメなの、「これ見よがし」に着ないとバブル味(み)は出ないよ。

 トレンディドラマを外された脚本家井川(伊藤白馬)は、大学時代の先輩松村の誘いで、急遽「ワンダーマン」の15話にかかわることになる。伝説的な前時代の作品「ユーバーマン」の、伝説的な特撮のない回からヒントを得て、井川は差別されさまよう宇宙人カスト星人(下野啓介=足立英)の、パン屋の主人(森田杏奈=橋本マナミ)との交情を描く。だが、差別を真っ向から扱う作品に、テレビ局は難色を示すのだった。

作家古川健が提示する差別と闘うこころの条件は、全くその通りだと思うし感動してしまう。テレビ局が渋ってペナルティを与えても、結局すぐれた作品を生む人が生き残っていくところもいい。しかし。特撮ヒーロー物に仮託して台詞でけりをつけると、(シーボーズよかった…)という子供時代の記憶とともに、(特撮ヒーロー物って薄手だったなあ…)という、もう一つの子供時代の感想が浮上してくる。もっと、台詞で語り合うだけでない、筋の「うごき」で、差別と闘う気持ちが表せたらよかったよね。登場人物に「これ」と特定できない影があり、みんな色々抱えているんだなと思わせるのに、最後に影を出しちゃうの、要らなくない?もっと、それぞれの影をきちんと芝居に落としていたらいいんじゃない?橋本マナミ、声は出ていて、芝居の前提条件は満たしている。