2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

OSK日本歌劇団 『レビュー 春のおどり』

「客席にいる皆様にも、私たちにも、つまずいたり、落ち込んだり、それ以上に笑ったり、何気ない日常の中にかけがえのない人生のドラマがあるはずです」パンフレットから顔を上げて富士山の緞帳を見る。じんわり来るこれ。このトップスター(桐生麻耶=きり…

劇団俳優座 第338回公演 『血のように真っ赤な夕陽』

ごめん。前半紙芝居。それはたぶん、調べたことを、誠実に組み立てたせいだと思う。予想外のことは一つも起こらず、後半の開拓団の主婦池田好子(平田朝音)の卓袱台返しのような発言で芝居が緊迫するまで、事実の羅列をじっと辛抱する。この緊迫に至るまで…

東京ヒューリックホール 『PHANTOM WORDS』

「あんた誰だっけ」第2幕冒頭、4時間の芝居を半分見たところで、心に呟いている。 中国の秦王朝が滅び、漢が勃興するあたり、沛の街の威勢のいいあんちゃんの劉邦(花村想太)を中心とする芝居なのだが、たった今、2500円のぺっらぺらの(表紙いれて14葉)パ…

東京芸術劇場プレイハウス 森新太郎チェーホフシリーズ第一弾 『プラトーノフ』

「うわっひどい男、でも、」と私は必ず付け足すのだった、 「チェーホフほどじゃない。」 失恋の友達を慰めながら、なんでそんなにチェーホフひどい奴だって思っていたんだろあたし。ハンサムでかしこくて世を蓋う天才で、手紙とかやたら出すくせに、肝心の…

新橋演舞場 『トリッパー遊園地』

『ウィンストン・チャーチル/世界をヒトラーから救った男』(2017)を観ると、世界のあまりの単純さに目を疑うようなシーンがいくつも出てくる。徹底抗戦を叫ぶ地下鉄の乗客たち、その名をメモして演説に使うチャーチル、作戦はうまくいき、ダンケルクのイ…

ビルボードライブ東京 ダン・ペン&スプーナー・オールダム

一階平場へ降りて、ステージを見ながら上手(右)から下手(左)に歩いてみたが、何の変哲もなく、しずーかにギター(素人目には普通のギター)がスタンドに立てられ、華奢な電子ピアノに楽譜が開かれているだけで、何も視界に引っかかってこない。つー、と…

彩の国さいたま芸術劇場 彩の国シェイクスピア・シリーズ第34弾 『ヘンリー五世』

吉田鋼太郎の演出って不思議だ、車のハンドルの「あそび」のように、余裕が芝居のキズを吸い込む。キズが魅力に見える。「あっ、そこ取っちゃうの?」という吃驚も、芝居の輝きを増す。「そこ取っちゃった」の驚きました。「ない」ことで「ある」のが際立ち、…

丸の内TOEI 『闇の歯車』

(テレビなの映画なの?) 要所要所で疑問が頭にひらめく。 テレビだったらとってもよかったし満足する。まず、水も漏らさぬ男たちのキャスティング。誰一人見劣りしない。瑛太の眼の光、緒方直人のせっぱつまった充実、大地康雄の笑い、中村蒼のぼそぼそし…

Bunkamuraザ・ミュージアム 『クマのプーさん展』

ニューヨーク公共図書館に所蔵されている本物でなく、複製されたプーやトラーやコブタがいるケースに近寄り、彼女と一緒に来た20代のお兄さんが「かわいい…」とつぶやいている。 そっ、岩波の『クマのプーさん プー横丁にたった家』に載ってた本物の写真が…

パルコ・プロデュース2019 『母と惑星について、および自転する女たちの記録』

とても優れた戯曲を、とても優れた演出で描く母親の呪いと祝福の物語である。 奔放な母峰子(キムラ緑子)の3人の娘は、峰子の遺灰を携えてイスタンブールへ旅に出る。母と、その周りを惑星のようにめぐる娘たち、破天荒な母親はまたその母から呪いと祝福を…

京都国立博物館 平成知新館 『日中平和友好条約締結40周年記念 特別企画 斉白石』

気温15℃の春の日差しの中、窓越しの遠い芝生の上で、京都国立博物館の公式マスコット「トラりん」が来館者に愛嬌をふりまいている。「トラりん」は薄墨色と白の目立つとらの着ぐるみだ。館内の休憩所には、濃い桃色の服を着た10才くらいの中国人少女がいて…