日生劇場 『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』

 セブンの前で、何故不良がしゃがんでいたかというと、それは何かのデモンストレーションでもプレゼンテーションでもなく、ただ、そういう風にしか座れなかったからである。体と心は、関係ないみたいだけど、関係してる。

 三浦春馬の演じる「男」(The Man)は、16歳のスワロー(生田絵梨花)の家の納屋に降ってわいたように現れる。彼はスワローの信じるとおり、キリストなのか。「男」には足と手に傷があり、それまでの屈折を身体で表わすため背を屈め手足はいつも曲がっている。これがねー。ちっとも似合わない。サマになってない。頭では理解してるけど、肚落ちしてないね。心の捩れが身体に出るように、「男」の体の癖を鏡の前で検討して。歌も自分の過去を吐き捨てるくだりで大きく演じすぎ。日生そこまででかくないよ。歌の端々に鬼火が灯るようにやってほしい。全体に大げさ。生田の声が「三月の水」「早蕨」って言葉を思い出させるが、冒頭のきょうだい三人で下手から上手に歩く足取りがもー、まずい。演出の白井晃はそこんとこどう考えているのだろうか。それにさ、1959年て、2059年の方が近いよね。何の企みもなくそのままやるんだね…。子猫を引き上げるところもちっともドキドキしない。子供の俳優というものは、大人がきちんと指導すれば、もっと光るのだ。厳しくという意味じゃない。勘所を押さえた演出してほしい。

 前半緩いのに、納屋の中の「男」とスワローの最終景がまばゆい。突然、三浦と生田のファンにとって最高のコンテンツとなる。なら最初からちゃんとやって。みんなに最高になるように。キャンディ(MARIA-E)、裏切られた女になってからは、キャンディがこの芝居を推進してゆく。もっと前に出て、つよく演じていいよ。開幕6分前、スモークが立ちのぼっていく所が素晴らしかった。