TOHOシネマズ日比谷 『マスカレード・ナイト』

 「練りに練った緻密な脚本」(パンフレット)。何に向かってどう練った。推理物だから筋は練ったのかもしれん。しかし、台詞はどうよ、台詞は。新田刑事(木村拓哉)の「あなたのその眼は…」という大切な台詞、係り結びがおかしいぞ。作品以前に文法が問題、とか、映画人(テレビ人?)の劣化やん。他にも木村拓哉のあきらかな台詞の言い間違い(本人がすみませんと言っている)を本編に使っていて、これは木村に対する遠慮か、何か臨場感みたいなものを間違った方向で求めているのか。予算ないの?

 ホテルコルテシアの大晦日のパーティーに、殺人犯が現れるという密告が警察にあり、新田は再びホテルマンとなって潜入する。フロントからコンシェルジュに移った山岸(長澤まさみ)達もまた、パーティーをつつがなく進行すべく、全力を尽くす。

 この人が犯人であってくれよと全力で祈った人がきちんと犯人。犯人も犯人以外も皆持ち場をプロらしくちゃんと守り、やりとげる。特に、長澤まさみ、優等生。スポーツだったらそれでいい。勝てる。でもさスポーツじゃないし、ニュアンスが全然ない。微量でもすべてを変えてしまう心の色、例えば新田を憎からず思うわずかな気配とかがないとつまらない。木村拓哉もニュアンスの読み取りが薄い。運動神経の反射でやってる。台詞が「肚落ち」するまで考える。

 木村佳乃、何でもない奥さんの役だが奥さんの心の二層目にしっかり手がかかっている。けど、もう一息、三層目まで行かないと。鏡見て稽古したのかなあと思ってしまった。あとさ、カメラの人、もっときれいに撮ったらどうなんだ。警察の人には、ざわざわしていてほしい。麻生久美子、凍った鍾乳石のような表情は素晴らしい。博多華丸、目を剥いちゃダメ、それ秘密兵器だから。東根作寿英、もうちょっと見たい。