2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

世田谷パブリックシアター 『子午線の祀り Requiem on the Great Meridian』

天を貫く遠い彼方からの視線が、「息子の死」を見、その死を手をつかねて傍観していた「自分」を見、敗け、失われてゆく「我ら」をみる。自分もまた、その天の非情のめぐりを知る大乱の物語。 2017年上演版の星空をもっとずっとかっこよくしたバージョンだけ…

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 『メトロポリス伴奏付上映会 ver.2021』

わざと簡易に立てられたスクリーンの下手手前には、ビブラフォンアコーディオンピアノコントラバスがある。楽譜の上に光が当たり、四角い白さが際立っている。上手は「メトロポリス」に林立する塔のように見えるものが台上にいくつも並べられ、その円形の台…

劇団俳優座 No.345 『雪の中の三人』

逸脱、決められた枠から外れること、それが許されるのは、トブラー(森一)が億万長者だからだ。トブラーは貧乏人を装い、下男のヨハン(加藤頼)はトブラーに命じられて裕福な事業家を演じる。一方フリッツ・ハーゲドルン(田中孝宗)が家業の肉屋にもなら…

こまつ座 第135回公演 『日本人のへそ』

父親たちが、冬は都会へ出稼ぎに行き、夏はその失業手当をもらいながら本業の農作業に精を出すところ、日本のチベット、貧しい東北の寒村から一人の娘(小池栄子)が、東京へと集団就職で出て行った。美しさが仇をなし、娘は次第に場末の町に移り、職業も人…

シアターコクーン シス・カンパニー公演 『ほんとうのハウンド警部』

鏡の中では、もうすでに現実は歪んでいる。 「間仕切り」の鏡が取られると、舞台の向こうにもう一つ客席があって、そこに演劇評論家のムーン(生田斗真)とバードブート(吉原光夫)がいる。そしていつからか、舞台の上の舞台にはちっとも動かない倒れた男(…

配信 『桑田佳祐 静かな春の戯れ Live in Blue Note Tokyo』

1曲目2曲目3曲目、椅子に腰かけギターを抱えた桑田佳祐はとても厳しい顔をして、こわい目つきで歌うのだ。ブルーノート東京、並んだテーブルに、キャンドルが無数に灯るのに、無人です。『桑田佳祐 静かな春の戯れ Live in Blue Note Tokyo』。これからこの…

Pカンパニー シリーズ罪と罰 CASE9  『花樟の女』

悪評が大きすぎて、本人の実像がわかりにくくなっている作家、真杉静枝を、女だからと軽んじられ、外地うまれと蔑まれる一人の奮闘する人間としてえがく。でもまず、兄が戦死した中村地平(千賀功嗣)の台詞さー。「両親が落ち込んじゃってるんだ。」 ここ、…

本多劇場 伊東四朗生誕?!80+3周年記念『みんながらくた』

コメディで呼吸(いき)を合わせるっていうのは、むずかしいもんだなと、それぞれの俳優の息の仕方を観察するのであった。 まず、出色だったのは堺小春だ。誰にも合わせず、自分の間合いで堂々と息をしている。一個人である。その結果、マッチングアプリでサ…

よみうり大手町ホール 『ぼくの名前はズッキーニ』

芝居の!ノリが!わかりにくい! 踏み出した右足に力が入らず、すぐに左足に踏みかえるみたいな、えーと、オフビートの微妙なノリなのに、それが観客に伝わるまでの時間が長すぎる。「じわじわ」すぎる。 ズッキーニ(辰巳雄大)は6才、事故に遭ったお母さん…