2014-01-01から1年間の記事一覧

シアターオーブ 『バベル BABEL[ WORDS] 』

放射能に倒れた人の間を、すたすた歩いていくアトム。 びっくりした。衝撃。 「アトム、終わらないで!」毎週の放送時間が終わりかけると、ひよひよの3歳児の足で泣きながらテレビを蹴っていたアトム第一世代である。アトムがそんなことするわけないじゃない…

はえぎわ 『ハエのように舞い 牛は笑う』

「あいつにはフラがある」 お笑いの世界では、何もしなくても笑わせるような雰囲気を持った芸人をこんな風に言うらしい。飄々としている、とぼけている。味がある。はえぎわの『ハエのように舞い 牛は笑う』は、深刻な世界の見取り図を、全篇フラでつないだ…

シアターオーブ 『ウォーホース』

耳がぴくぴく動く仔馬のパペットを、首、前脚、後部と、傍らに立つ三人の人形遣いが支えている。ひょろっとした頼りない脚。様子をうかがったり餌を食べたり、神経質に首を振ったり、人形遣いのことをすっかり忘れて馬を見る。歳月が過ぎた、とナレーション…

本多劇場プロデュース 『牡丹灯籠』志の輔らくご in 下北沢

圓朝の怪談。と聞くが早いか、頭の中を、大きな活字で、「新三郎様」という文字や、「豊志賀の死」という文字が明滅する。『牡丹灯籠』と『真景累ケ淵』がごっちゃごちゃ。とにかく、こわいと思っている自分。すーっと場内の明かりが落ち、息を詰めるように…

パルコ劇場 『母に欲す』

客席にあかあかとアンバーの照明が当たる。ドームの中に入ったみたいだ。 胎内を連想。アンビエントな撚れる音楽が大きくなり、明かりが消える。緊張が高まる。 (なんか生まれるの?) と、期待したのもつかの間、一人暮らしを凝縮した部屋(洗わない食器つ…

シアターコクーン 『太陽 2068』

立ち見。がんばりました。 床に敷かれた暗幕が、ひたひた、するすると舞台の奥へ退いていった。露わになったところは透けている。一か所、幕が真下に垂れ下がる場所がある。ひやっとした。 地下に通ずる出入り口なのだ。床がスケルトン構造で、地上には廃墟…

ハイバイ 『おとこたち』

大入り。当日券に長い列ができ、入れるかどうかわからない、とおもった。観られてよかった。 上手側を覆う壁。四角をふたつ、段違いに置いたような舞台。その手前に散らかったソファセット。その「散らかり」には実は仕込まれた衣装や小道具がある。俳優たち…

赤坂ACTシアター 『海辺のカフカ』

バスやトラックや公園や神社、書斎や自販機や図書館が、透きとおった大きな四角いケースに一つずつ収められている。蛍光灯で照らされ、中のものは皆くっきりしている。とても人工的な感じ。観念的。標本だ。このガラスケースの世界の全てが、とじこめられて…

六月博多座大歌舞伎

いきなり不穏。ごぉーんという遠くの鐘の音、暗がりにただならぬ気配。主人中川三郎兵衛(嵐橘三郎)の妾お弓(中村魁春)と密通し、中間市九郎(中村梅玉)が手討ちにされそうになっている。夢中で手向かいする市九郎は中川を逆に殺してしまった。市九郎は…

夏木マリ 印象派NEO vol.2 『灰かぶりのシンデレラ』

F列の23番、上手寄り。重低音が右の鎖骨に響く。舞台の上にDJ(BABY-T)がいて、それから察するにこれはクラブ音楽。音に耐える、のはやめて、こんな音楽をかけて踊る人たちがどこかにいるのだなあと思う。今年の帽子、今年の服を着たきれいな人たち。洗濯で…

青山円形劇場 『赤鬼』

開場し、客が席に着いていく間に、アンサンブル(竹内英明、傳川光留、寺内淳志)がすうっと現れ、舞台を通り抜ける。客席と舞台の空気をかきまぜている。円形舞台を土星の環のように通路が囲んで、半分は舞台より高く、半分は低い。うっすら波の音がして、…

日生劇場 『昔の日々』

真紅の張り出し舞台、真紅のシェーズロングが左右に二台、真ん中に真紅の肘掛椅子が一つ。張り出し舞台の奥はみな灰色、中央に暖炉、下手側にピアノとベッドが一つ、上手にはガーデンテーブルと二脚の椅子、葉の落ちた木が一本、二人掛けのベンチ。 開演前に…

東京都美術館 『バルテュス展』

ものすごく猫と遊ぶと、猫の姿かたちを、一瞬見失うことがある。猫のこころと、自分のこころが、対等になってしまうのだ。私が、「あんただれ?」と、思う。すると猫も、あんただれ、と思っている。一対一。そしてそのあと、相手が純粋無垢に自分本位の、自…

イキウメ 『関数ドミノ』

卒業した時に、数学全部、学校に返却した。一つの値に対して、ただ一つの値が対応するとき。それが「変数」を入れても成り立つとき。そういうもののことを関数とよぶらしい。あってる? 原因不明の交通事故の目撃者たちが、保険会社の調査員横道(岩本幸子)…

パルコ 『かないくん展』

死ぬとどうなる。と問う前に、死ぬのがめちゃくちゃ怖い。よわむし。死期を宣告されたりしたら、動揺の余り死んでしまいそうだ。 夏休み、日焼けで剥けた皮膚が、ワンピースの下でひらひらしている。自分のもので、自分でない。子どものころには、死はそんな…

文学座5・6月アトリエの会 『信じる機械』

落下する。とめどなく。青空に向かって。 楕円形の舞台の奥に、書類と本の山。この「塚」がなんだかまがまがしい。911のビルディングや、戦場の瓦礫を思わせる。舞台面にはたくさんのチラシ(英字の広告と記事)が貼りこまれていて、塚から吹きちぎられて…

おちないリンゴ#11 『10978日目の鏡』

10978ひく閏年7、割る365=30、0575342。スマホの電卓初めて使った。『10978日目の鏡』。 30才を迎えた主人公サトウユウコ(*)は不眠に悩まされている。姿を現した「眠り」(柳澤有毅)とセックスレスの夫婦のような会話を交わし…

世田谷パブリックシアター 『ビッグ・フェラー』

『ビッグ・フェラー』を見ていると、一つのテロが、どれだけその中に暴力を含んでいるかを思い知る。 アイルランドの統一と、独立を求める武闘派組織IRA、そのアメリカでの大立者コステロ(内野聖陽)と、仲間。1974年、世論がIRAに同情的であった時代か…

青年座 『見よ、飛行機の高く飛べるを』

「東京の、首にハンケチ巻いて演説するような、そんなおなごなんぞはペストだ!国賊だ!本当の新しいおなごでにゃぁ!」 校長先生(平尾仁)のセリフを聞きながら、そぉっとその彼をピンセットで摘まんで、現代の下北沢の野に放つ。 「わぁああああ」 三日と…

シアタートラム 戯曲リーディング 時代を築いた作家たち②ウージェーヌ・イヨネスコ

イヨネス子。書いたらうっすら笑ってしまったが、アフタートークを聞いていて、イヨネスコはずいぶん遠い、昔の人になったのだなあと思った。女流写真家のイリナ・イヨネスコと間違われたりしている。ウージェーヌ・イヨネスコは男で、1909年ルーマニア…

東京ウィメンズプラザ ホットツナ レクチャーコンサート with ピーター・バラカン&ジョージ・コックル

一度も聴いたことはないけど、ジェファーソン・エアプレインは、すごいバンドに違いない。 今日、そのメンバーだったヨーマ・カウコネンとジャック・キャサディのライヴを見たのだ。(以下インタビュー:P・バラカン、G・コックル) ものすごい演奏力。息が…

彩の国さいたま芸術劇場 『私を離さないで』

生きてることは理不尽の連続。朝目を覚ます、学校へ行く、お金を稼ぐ、ご飯を食べる、夜眠る、そしていつか死ぬ。どれ一つとして理不尽でないことはないのに、カズオ・イシグロは、もっと峻烈な理不尽を登場人物に加える。『私を離さないで』は、科せられた…

ナイロン100℃ 41st session 『パン屋文六の思案 続・岸田國士一幕劇コレクション』

入場とともに一枚のシートを手渡される。真四角の厚紙が赤と青で四つに仕切られて、番号が振ってある。 「ナイロン100℃41st session パン屋文六の思案 続・岸田國士一幕劇コレクション ニオイシート」 これがあの、芝居の途中でにおいを体験させるというやつ…

東京芸術劇場 『酒と涙とジキルとハイド』

分厚い本を「ひらいた」ようなセット、本の「のど」の部分に階段、階段下は暗がり。地下室である。下手側に長テーブル、薄紫の液体と、透明の液体が、二本のフラスコに入れられ、沸いている。フラスコの沸きあがる音が、低く聴こえる。壁一面に棚、茶と白の…

世田谷パブリックシアター 『夜中に犬に起こった奇妙な事件』

セットを見るなり、非現実感が。学校の教室だ。正面は黒板、上手側奥に出入り口、下手側奥にも出入り口がある。ハの字の形に両側に椅子が並べられ、下手の前と、上手の前には机と椅子が一組ずつ、上手奥にはピアノが一台。上手の出入り口、下手の出入り口、…

劇団☆新感線2014年春興行いのうえ歌舞伎『蒼の乱』

国司、常陸源五(インディ高橋)、その妻那香(森奈みはる)、坂東の豪族良兼武蔵介(逆木圭一郎)、良正上総介(吉田メタル)の「わるもの」四人が、下手前方に現れて、そろって下手奥へ歩いてゆく。「ふんっ!」って感じ。足首がちょっと、芝居してる。こ…

ゼップダイヴァーシティ ボブ・ディラン

ボブ・ディランは私に、わからないことというのは存在していて、それ以上でも、それ以下でもないんだよと教えてくれた偉い先生だ。それなのに私ときたら、ディランの歌詞集を、不器用にあっちめくり、こっちめくりしてるうちにもはやライヴ当日。ネットで誰…

パルコ劇場 『万獣こわい』

苛立つ女。陽子(小池栄子)の声には、途切れることなく苛立ちがこもる。陽子は不倫の末に結婚した夫(生瀬勝久)と、カフェをオープンしようとしていた。生活が苦しい。彼女は子供を欲しがっているが、なかなか出来ない。 夫の方は妻とフラットに受け答えし…

大田区民ホールアプリコ 『熱き心で突っ走れ!』 第一部お芝居 第二部歌謡ショー

つよい風が吹いているけど、咲きたての桜は散る様子がない。今日は小林旭を観に行く日。昭和の映画スター。歌手でもある。 正直に言うと、私には日活の小林旭が、よくわからなかったのである。渡り鳥シリーズをちら見しても、見どころがわからず、日活ファン…

homspun(ホームスパン)刊  『TSUTSUI'S STANDARD――筒井さんの子ども服――』

表紙が映画みたいだ。クロス装のざらりとした手触り、空色に濃いピンクの小花模様がひろがり、一番下の白いレースと、それを縫い付けたミシン目で、服の一部だとわかる。 服の左下からぼんやり明かりが当たって、表紙の半分がほの明るい。中央に小さく、控え…