六月花形新派公演 『黒蜥蜴』  2017

橄欖緑といいたいくすんだ緑に、時代のついた金色の丸に越のマーク。真上を見上げると四角いマス目の飛び飛びにステンドグラスがあり、天井の梁にはいちいちぜんぶ違う金色の交った装飾がある。この劇場は『黒蜥蜴』にぴったりだ。新派の人が、『黒蜥蜴』や…

Bunkamuraザ・ミュージアム 『ソール・ライター展』

麦わら帽子で街に出る。 「あ、ソール・ライター」 麦わら帽子のつばが視界上方を水平に区切り、キャノピーのように境界を作る。手前と向こう。私と他者。 細かく編まれた麦わらの覆いの下で、外の景色は一層生き生きとして隔たり、近く、遠い。店の前に水を…

木ノ下歌舞伎 『東海道四谷怪談――通し上演――』

「お岩さんてさ、井戸から出てくるやつですよね」違う違う。お岩さんは井戸から出てこん。お岩さんは夫に横恋慕した娘の親に毒を盛られて、顔が醜く変わる。夫はそれを知ったうえで、お岩さんを捨て、若い金持ちの嫁を貰おうとするのだ。凄惨な髪すき(毛が…

一周忌追悼企画 蜷川幸雄シアター 『身毒丸 復活』

少し緩い白いズック。少年(しんとく=藤原竜也)の足の指は、その中で地面や現実につかないよう、固く縮こまっている、とおもう。目に痛いような白いシャツ、母のない子らしく伸びた髪、つーんとまっすぐな鼻梁、すくめたほそい肩。腰高に黒いズボンを引き…

一周忌追悼企画 蜷川幸雄シアター 『ジュリアス・シーザー』

上昇と拡大、『ジュリアス・シーザー』の舞台セットの大階段を見て、そんなことを考える。男の人の世界って、たいてい、上昇と拡大を基盤にしている。少年漫画(例えばドラゴンボール)なんて、上昇と拡大の繰り返しだよ。そして、その裏の、下降(転落)と…

上野の森美術館ギャラリー 『女たちの絹絵』

品。グエン・ファン・チャン(阮藩正 1892―1984)の画には気品があり、それが凡百のファンシーでセンチメンタルな絵、プロパガンダとなるかもしれない宣伝美術から彼を遠ざけている。 その気品の中には、なにか言いがたい悲しさみたいなものがひっそり籠って…

東京国立博物館 特別展『茶の湯』

茶筅とお茶碗持っている。お茶を習ったこともなく、お点前なんて知らないけど、お抹茶が好きなのだ。手前勝手に、(お抹茶のひとり分の量がわからない…。)ってところから、ひとり試行錯誤で、おいしかったり、おいしくなかったり。最近はネットにお茶の立て…

原美術館 蜷川実花『うつくしい日々』

蕃茉莉(ばんまつり)が白と紫の小さな花を咲かせ、深紅の薔薇が身を反らして花弁を巻き上げる季節に、蜷川さんは亡くなっちゃったんだなと思っていた。白、紫、赤。激しい、ヴィヴィッドな色。 しかし、蜷川実花の写真に見る父の死は、淡い、美しいうす紅色…

秋田雨雀・土方与志記念青年劇場 第116回公演 『梅子とよっちゃん』

「あんまり好かないから。西洋人ぶっているから。」 控えめに、身を固くして登場した田村俊子(片平貴緑)は、築地小劇場に参加しない理由をこんな風に言う。 土方与志とその仲間たちが作り上げた、鷹揚で明るく知的な雰囲気を、外側から批評する目、この視…

Blue Note tokyo 『JAZZ FOR CHILDREN チャイナ・モーゼス』

子どもの日。路地や駅頭で、朝から、ものすごくハイテンションな子どもたちのきゃあきゃあ声が聞こえる。今日は子どもが主役だもんね。ブルーノート東京では、「JAZZ FOR CHILDREN」と題して、お昼の三時半からChina Mosesのショーが開催されました。 次々に…

新ロイヤル大衆舎 『王将 第三部』

本筋の運びとはあまり関係ないような、「なごやかさ」を出すくだり、お茶だと思っていたものが違っていた、という、空々しい段取りと笑いになりかねないくだり、これ、北条秀司のオリジナルだろうか、腕利きの俳優たちの手にかかって、まるで今生まれてきた…

GEKISHA NINAGAWA STUDIO公演 『2017・待つ』

舞台が暗くて、隅にあるデュシャンみたいな便器しか目に入らない。しばらくすると薄暗がりに、祭壇のような(ぎっしり)正面の混沌がぼうっと現れる。ラッパ型の顔を伏せて群がり咲くダチュラ(チョウセンアサガオ)、ドーリア式だかイオニア式だかの柱が斜…

新ロイヤル大衆舎 『王将 第二部』

第一部では、「将棋と生活」の相克を坂田三吉(福田転球)は生きていたが、第二部では、「将棋と政治」が語られる。政治っていうか、世間の評価だね。それが三吉を引きさらい、持ち上げ、落とし、もみくちゃにする。早手回しに三吉をおだて、「関西名人」と…

新ロイヤル大衆舎 『王将 第一部』

客席数ほぼ90の小さな劇場で、15人の名のある俳優が、出はけに苦労しながらやる芝居って、どんなの?そんな近い所から見る長塚演出の『王将』って、どんなかんじ?と、みんながみんな思い、チケットは即時完売、運のよかった私は初日に行ってきました。 縁台…

新宿「SPACE雑遊」 『やんごとなき二人』

「絵を描く時の心持は、わかっています」。22歳、油絵を二枚描いた中川一政は、こういったそうだ。その二作目の『霜のとける道』(1915)をみると、(わかってんなー。)と思う。青い空、明るく強い日に照らされて影の濃い景色、鮮やかに赤く見える段差のあ…

世田谷パブリックシアター りゅーとぴあプロデュース『エレクトラ』

ほんとうに怒ると、人の怒りは破壊的で、自分をも他人をも滅ぼさずにはおかない。自分の怒りでありながら、制御できず、自意識は怒りに仕える巫女さんのようになってしまう。「いま、怒ってらっしゃいます」みたいな。おてあげだ。自分でも、どうにもならな…

蜷川幸雄一周忌追悼公演 さいたまゴールド・シアター×さいたまネクスト・シアター 『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』

乱れている赤い幕。上手の幕と、下手の幕、合わせ目が疵みたい。日常の亀裂としての非日常が、いま幕を開ける。 それは透きとおる四角いお墓。いくつもいくつも、透明の水槽が整然と並べられ、一つずつに一人、老人たちが横たわり、胎児のように体を丸めてい…

ピーター・バラカンのPing-Pong DJ Special ゲスト:小坂忠

「えっ牧師」 予習ゼロ、晴れ豆の暗い照明でウィキペディアを見てる。牧師って、むかし「キリスト教」って授業を受けて以来、会ったことない人たちだ。牧師さんは詰襟のような黒い服を着ていたな、と思い出す。小坂忠さんは牧師だけど、真っ赤なシャツに黒の…

IHIステージアラウンド東京 ONWARD presents 『劇団新感線 髑髏城の七人 season 花』 

「いい席だねー。」「ほんと、いい席だー。」 私の一列前の人が、ほかの席から様子を見に来た友達に、口々に羨ましがられている。確かに、いい席。天魔王の見る「整った」満月は半分見切れてしまうけど、俳優さんの姿もよく見え、何より、端で劇場が「廻って…

ヒューマントラストシネマ有楽町 『はじまりへの旅』

「学校、行った方がいいよー。」 あーんなに学校大嫌いだったくせに、画面に向かって呟いているのだ。変節?保守化?年のせい? やっぱり今でも学校嫌いだし、叱られた先生のことはなつかしいよりふーんだと思う気持ちの方が強い。だが、いま、年を経て、一…

Bunkamuraシアターコクーン 『フェードル』

「魔法が解けるまではどうすることもできない」とプルーストも言ってた。って、プルーストに聞くまでもなく、恋心という物は、手の施しようがないものだ。ラシーヌの『フェードル』や『アンドロマック』、大好きだ、恋の悩みの真ん中にどっぷり嵌って、「ど…

東京芸術劇場 『ハムレット HAMLET BY William Shakespear Directed BYJohn Caird』

夢。誰の夢か。 この人たちは皆、夢と、夢でないものの間で息をする。それはとても芝居に似ている。 うすく傾いだ四角い舞台。その舞台の下手には本当の観客席が設けられ、上手の、暗い、役者が芝居の進行を見守る席と対峙する。彼らはホレイショー(北村有…

ドーナル・ラニー&アンディ・アーヴィン Never Ending World Tour 2017

ポーグス、エンヤ、チーフタンズ、アイルランド音楽を飛び石みたいにしか聞いたことがない私でも、ドーナル・ラニーの名前は知っている。 ギリシャのブズーキという楽器(洋ナシを半分に切ってそこへ弦を張ったようなかたちの楽器)を取り入れ、背面がフラッ…

劇団黒テント第76回公演 『亡国のダンサー』

一人の男「わたし」(服部吉次)が大きな机の上に軽く手を触れる。「降りやまない雨、」と彼は言う。倒れている「わたし」を描写する。「わたし」は顔の間近に雨粒の跳ねるのを見ている。雨粒のダンス。浅い傷や深い傷、彼は動くこともできず、失血し続ける。…

新国立劇場中劇場 『近代能楽集より 葵上・卒塔婆小町』

香がたきしめてある。それともこれは花の香りなのか。外気の冷たさにすくみ上っている身体を、ゆっくり緩めてくれるようなショパンが流れている。舞台には赤い幕が襞深くかかり、照明がその幕の上に、桜の花を濃淡二色で浮き出す。背もたれに凭れながら、誰…

かぐらざかあかぎ寄席NEXT→ 落語「三遊亭萬橘」独演会

神楽坂、赤城神社。迷いようがない。地下鉄東西線の神楽坂駅1番出口を上がって左すぐ。立て看板もたってるし、赤い鳥居も見える。石段を上がりきったところに、大きなガラス窓のカフェもあるのだった。カフェから窓越しにもうつぼみを持った桜の木、蛍雪天神…

シス・カンパニー公演 『死の舞踏』

コミック地獄図絵。 途中、いや、序盤、観ながらちょっと怒っているのである。 コミックなのかー。 そんな気持ち。スウェーデンの島にある要塞に、軍人エドガー(池田成志)は妻アリス(神野三鈴)とともに住んでいる。島のお歴々とはうまくやれないため、人…

シス・カンパニー公演 『令嬢ジュリー』

子供の本の作者、リンドグレーン(スウェーデン、1907-2002)が、日本語訳されているたくさんの本の中で、たった一回、性的な関係に言及したことがあって、それは農家の主人と女中に関するものだった。その「おはなし」には作者のかすかな怒りが透けて見え…

東京芸術劇場 シアターイースト 『不信 ―彼女が嘘をつく理由』

マンションの隣の部屋の夫(栗原英雄)はフィックス、その妻(戸田恵子)はドリー、高校教師(段田安則)は手持ち、その妻の編集記者(優香)はクレーン。なんだか登場人物の視点がみんなカメラで説明できそうだ。四人四様の言い分で芝居は進行するが、どの…

ムジカーザ 『第八回 上原落語会 夜の部』

わたし開場から数分おくれた、と思ったら、もうホールはお客さんでいっぱい。寄席っぽい音楽はなしで、ムーディなダニーボーイが流れるのを、みんな静かに聴いている。今日は小学生がいないなあ。ジョン・レノンのジュリアなど、アダルトないい感じの音楽が…