ヒューマントラストシネマ有楽町 『COLD WAR  あの歌、2つの心』

なんでもかんでもすーらすらと口に出し、なんでもかんでも説明し、要するにすごく口の立つ自分が、この映画のことは身内に説明できない。話し始めたら泣きそうでかっこ悪い。映画の中で起きたことが、うまくことばにならない。ラジオでこの映画のことを「説…

吉祥寺シアター ロロ 『はなればなれたち』

ロロ、成長していた。そりゃあ以前観たのは2016年だったもんねー。昔は言えてなかった詩的な台詞をちゃんと一旦体に取り込んでいる。「あなた」と「わたし」、「樹木」と「電信柱」、「過去」と「未来」が、平気で入り混じる混沌とした世界をきちんと演じ分…

中洲大洋映画劇場 ナショナル・シアター・ライブ2019 『アントニーとクレオパトラ』

拮抗する世界。最初アントニーはリゾートのような「私」(わたくし)の楽園エジプトと、灰色のビジネスマン、暗い軍服の「公」(おおやけ)の世界をうまく操ってバランスを保ち生きる。公私の別みたいだね。 でもちょっと待って、リゾートなの?アジアを侵食…

博多座 『博多座開場20周年記念 六月博多座大歌舞伎』  (2019)

空梅雨、平日の昼過ぎ、天神をちらちら行きかう夏の白っぽい服装の人々を見ていると、気づくことがある。「今年の流行」を身につけている人が少ない。一度水をくぐった「去年の服」「おととしの服」ばかりだ。目まいのように、一年前、二年前、三年前の夏へ…

東京ドームシティホール 『テデスキ・トラックス・バンド SIGNS 2019 TOUR 』

「ここは…違うよ」 一斉におもちゃのヅラをかぶる30代の女性グループを見ていきなり後ずさる。今日後楽園は大賑わい、人気のライブや遊園地や野球でごった返している。ようやくたどり着いたTOKYO DOME CITY HALLはアリーナと、上品にくっついた二階席、そし…

吉祥寺シアター serial number 02 『機械と音楽』 2019

「10月革命が成就するロシアの歴史的な夜である。と、走ってくる少年、15歳のイヴァン・レオニドフ。人ごみにまかれ戸惑っているらしき少女オリガを発見し、叫ぶ。 イヴァン オリガ! 」 言えてねー。オリガ(きなり)が見えてないし、実体もない。愛がない。…

池袋芸術劇場 上海京劇院日本公演 『西遊記~旅のはじまり 2019』

聴こえてくるものすべてが節。チャイーンチャイーンと鳴る鐃鈸(?)、カカカカと聴こえる小さな平置きの太鼓(たぶん)、銅鑼、どれも声だ。(ついでにいうと、どうして1500円のパンフレットに、楽器の紹介がないのか?挨拶文で優に6ページって驚きだし、こ…

世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#009 『キネマと恋人』 (2019)

カチカチとフィルムの回る音がして映画が映し出され、ヒロインのハルコ(緒川たまき)が登場し、刻々と変わる心情を全身で生きる。妹ミチル(ともさかりえ)が謝りに来たと知ると色つきの足袋をはいた足は踊り、夫電二郎(三上市朗)の浮気に棒立ちのカラダ…

熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第六弾 東京喜劇 『翔べないスペースマンと危険なシナリオ~ギャグマゲドンmission~』

前説はフリップを持つ官房長官のギャグ。答えたくないことはスルーする間合いが巧く、東貴博は生き生きとやっている。だが、そこに女性記者の姿はない。あー、ここがめざす「昭和の茶の間」(パンフレットの作者挨拶より)って意味?エッジィなところに突っ込…

紀伊国屋ホール ラッパ屋第45回公演 『2.8次元』

地に足ついてる。それが面白さと、侘しさの源泉だ。 だってさ、舞台いっぱいに建てこまれた老舗の劇団の稽古場が、それ以上でもそれ以下でもなくリアル、天井まで三つに区切って縦に貼られた羽目板が、昭和中期を思わせて、本当に貧しく質素。力の弱そうなク…

三越劇場 『六月花形新派公演 夜の蝶』

君は夜の銀座を見たことがあるか。夕方タクシーがばたんばたんときれいに髪を結い上げた女たちを路上に吐き出し、七時半にもなるとその女たちと食事した客が、得意満面で「同伴」してバァに向かう。目線をどこにやってもきれいな女の人とおじさんしかいない…

Bumkamura ル・シネマ 『僕たちは希望という名の列車に乗った』

この映画の中でワーストと言える嫌な奴は、画面にちょこっと現れるだけのリンゲル自由ドイツ青年団秘書(ダニエル・クラウス)であるような気がした。「二分間の黙とう」を見過ごさず、上に報告して事を大きくする。高校生に話を訊くのに、仲間割れを狙って…

シネ・リーブル池袋 National Theatre Live In Japan 2019『英国万歳!』

ナイジェル・ホーソーンの『英国万歳!』、ああ観た観たと思うのに、思い出そうとしても、走るホーソーンを全力疾走でおつきの人が追うシーンしか出てこない。それは宮廷中が輪になって王様を囲み、宮廷ごと走って移動してるように見えたなあ。 ジョージ三世…

東京芸術劇場 シアターイースト 『ボッコちゃん ~星新一 ショートショートセレクション~』

星新一の黙示録。 日本の本を読む子供なら、小学生の時に一度は読んでいる軽い星新一の、重い背骨を成すような作品がオムニバスで六篇続く。暗い作家だなあ星新一。結構楽しく読んで、すーと忘れてしまったことを申し訳なく思った。 舞台はぴかぴかと反射す…

サントリーホール 大ホール 『ブラッド・メルダウトリオコンサート』in Japan 2019 

ごめんよブラッド・メルダウ。こんなに有名かつ人気とは知らず。と当日券を求める長蛇の列にあやまるのだった。しかも今日が今日まで、ブラッド・メルダウがジャズとも知らず。ジャズか。20代のある日、知り合いにジャズのチケットを貰った。ものすごく素…

日生劇場 『坂東玉三郎 世界のうた』

『ニュースセンター9時』で観たシェークスピアの装束の麗人は、ずいぶん年上のように中学生には思えたが、今となってはそんなに年も変わらないような気がする。若いよね、玉三郎。 幕が開き、ハープやピアノやドラムス、8人のバイオリン、クラリネット2人…

劇団東京乾電池 5月アトリエ公演 『眠レ、巴里』

うねる大西洋のように、瀬戸の渦のように、上品なグレーの光る布が、舞台いっぱいに皺の文様をえがいている。黒い壁にパリの建物の遠い輪郭。それも銀色のテープで作られて上品だ。布の上にはCDデッキや本やまくらが浮かんでいる。枕のせいで、大きなベッド…

赤坂ACTシアター 『海辺のカフカ』2019

この劇場もまた、一つの容れもの――うつわ――である。 四角いアクリルの容れものに蛍光灯が点き(カチンと何かにスイッチが入る)、トラック、木々、公衆トイレが、それぞれその中にあって、ゆっくり舞台前へ移動する(カチン)。透明の小さな函の中のブルーの…

彩の国さいたま芸術劇場開館25周年記念 『CITY』

うーん。脱お母さん脱物語裏ニナガワ?誰が誰だかわからない、と終演後誰かがロビーでつぶやいていたけど、そこも大事な要素だったのかもしれない。 「私の名前がわからない」世界、名づける人のいない世界、新しい、生まれたのか生まれないのかわからない世…

Bunkamura オーチャードホール 『RICKIE LEE JONES JAPAN TOUR 2019』 

全篇自然光で撮られた映画、線路の上を二人の女の子がきゃあきゃあ笑いながら遠ざかっていく。その年下の方の女の子は兄さんが死んで、一人ぼっちになってしまったけれど、寄宿舎は窮屈だから、脱け出して、明るい方へ明るい方へと駆け出すのだ。そこでエン…

シアターコクーン・オンレパートリー2019 DISCOVER WORLD THEATRE vol.6 『ハムレット』

劇場への階段を上がりながら、漂うかすかな音を聴くために足を止める。鋭い細い風の音。デリケートに選ばれた音だ。岡田将生のハムレットはじめ、皆台詞が、地面から水を吸い上げる植物のように、体の奥底、下の方から聞こえ、嘘がなく、そこがとても素晴ら…

新宿武蔵野館 『パパは奮闘中!』

これって、社会や家庭の中でのバランスを、一人の男が成長して新たに獲得していく話なの?いいのそれで? 巨大宅配システムの仕分け部門の仕事に従事する男オリヴィエ(ロマン・デュリス)。朝暗いうちから家を出てチームリーダーとして働く。彼は無力で、馘首…

ワタリウム美術館 『Walk this way ジョン・ルーリー展』

昔、内田光子が、「私たち(演奏家?ミュージシャン?)は、空間に音を放る人」と言っていた。音っていうのは、みんな、空間を漂ったり、飛んだり、空に吸われていったりするものなのかもしれない。 ジョン・ルーリーの描く人物はたいてい、下半身がない。空…

赤坂ACTシアター 『俳優とオーケストラのための戯曲 良い子はみんなご褒美がもらえる』

トライアングルが、船の舳先のように、音楽を切り裂いて進んでいく。そのちりちりいう音が、主音。(ていう?)オーケストラととてもあっていて、作曲したプレヴィンて凄いなーと一瞬で感得する。そしてよく練られた隙のない演奏と緊密な指揮。ありがとうヤニ…

東京芸術劇場プレイハウス 『奇跡の人』

アン・バンクロフトとパティ・デュークが、私の舞台『奇跡の人』鑑賞の、邪魔をするー。特にヘレンが触角のように手をあげてどこまでも歩くロングショットと、無愛想だったサリバン先生がー。 高畑充希、尻上がりによくなるけれど、前半の、ハウ博士(原康義…

シアターコクーン シス・カンパニー公演『LIFE LIFE LIFE ~人生の3つのヴァージョン~』

おや?幕開け、子供を寝かしつけるアンリ(稲垣吾郎)の息が浅く、弱い。息が浅いと、次に続く妻ソニア(ともさかりえ)の台詞をまたいで続くアンリの感情がぶつ切りになってしまう。ええと、直線の並縫いの運針の感じね、針が布に潜っていても、糸は続いて…

日生劇場 『笑う男 The Eternal Loveー永遠の愛ー』

「ミュージカルにおける演技の概念」てものが、もひとつ掴めん。歌唱の安定のために、演技が犠牲になっていいか?演技の充実のために、歌唱が弱くなっていいか? まず、この芝居で凄かったのは、セットだ。ダイナミックで計算され、シーンが移るのが楽しみだ…

東京芸術劇場プレイハウス 『世界は一人』

難解。集合的無意識(個人の意識の古層にある、人類の、或いは民族の記憶のようなのかな)を扱った話だろうねこれ。 まず、前野健太の「汚泥の歌」は、シンガーソングライター、歌手の歌として大変よく歌われている。でもさ、ちょっとエモーショナルすぎて恥…

中国国家話劇院 『リチャード三世  理査三世 』

暗い舞台に真紅の扁額が置かれ、「古代中国の文字のような英語」でRichardと書いてある。筆字だ。「えー?古代中国文字でいいじゃん」と思うけれど、エキゾチシズムでは終わらないという演出の意志なのだろう。上手にドラムスのようにセットされた赤い胴のふ…

新国立劇場中劇場 『毛皮のマリー』

男なのに化粧をされて、映画初出演の俳優はちょっと泣いたと生前語っていたが、寺山修司は『毛皮のマリー』で、同種の涙を一筋、少年欣也に流させて幕にする。昭和、それは明らかに男が威張っている世界で、女は劣ったものであり、女のようにふるまう者など…