2020-01-01から1年間の記事一覧

ヴィレッジプロデュース2020Series Another Style 『浦島さん』

六曲一双の大きな屏風。二曲の屏風がその両脇に立つ。舞台上手と下手に不均衡な箱のようなものの山。絵草紙がたくさん重なっているようにも見える。舞台中央に向けて、鋭い9本の照明があたる。かっこいい。 今日演じられるのは太宰治の書いた『お伽草紙』の…

Bunkamuraシアターコクーン COCOON Movie!!芸術監督名作選 『女教師は二度抱かれた』

夢は檻。夢は無、夢には顔がない。 動物園の動物たちはのん気で、みているこちらは優越感、と、「舞台と観客」「見られる人と見る人」の関係が語られる。してみるとこの世は檻?いつでも見られる人と見る人がいる。さしずめゲイは見られる人、私たちは見る人…

serial number 05 『All My Sons』

「どうぞ戯曲以上のことが起きます様に」と祈ってはいたものの、中央には「奥へ」(見えない方角へ)倒れているリンゴの木があって、羽目板の家の二階、客席に向かった角が、何か災厄でもあって齧り取られたように抉れ、暗がりがのぞいている。これさー、語…

三島由紀夫没後50周年企画MISHIMA 2020 『班女』

変わり種の三島作品を3本観た後ではたいへん、たいへん、オーソドックスな『班女』であった。 舞台奥に男(中村蒼)と女(橋本愛)が現れて近づき、たぶん『トリスタンとイゾルデ』が流れ、互いに取り出した畳んだ扇は影になるとまるで剃刀のように見える。 …

三島由紀夫没後50周年企画MISHIMA2020 『真夏の死』

ぱっと見、背もたれが梯子のように長い椅子が二つ。砂浜らしいところに並んでおかれている。『真夏の死』。この椅子は海を向いているのだろうか、何か待っている感じがする。原作通りだ。しかし、この椅子と向かい合う観客席というのも、何かを待ち設けてい…

シアターコクーン DISCOVER WORLD THEATER vol.9 『十二人の怒れる男』

十二人の陪審員が一室に集まり、スラム育ちの16歳の少年の罪の有り無しを議論する。少年は本当に父親を刺殺したのか。 陪審員一番(ベンガル)から十二番(溝端淳平)まで、みんな別々の型のお父さんモデルみたいに見える。生真面目なお父さん(二番=堀文明…

劇団民藝 『ワーニャ、ソーニャ、マーシャ、と、スパイク』

これ、トニー賞受賞作なの?トニー賞って、思ってたよりすごくないのかもしれないね。この作品、2013年か。 民藝、アップデートできてる?追いつけてる?まずね、パンフレットの最後の「劇団民藝連名」っていう名簿は、男優が上なの?もう、開幕前に胸が塞がった…

吉祥寺シアター 演劇集団円 トライアルリーディング公演 『虫たちの日』

うっ観客席で私けっこう若手、やばいぞ円、なんとかしないと。 ほぼ直線で出来た木の椅子2つ。座面は平ら、座りにくかろう。椅子から見て中央寄りにそれぞれスツールがある。一つには新聞が載っている。下手寄りにはめいめい譜面台。窓のような大きさで、四…

三島由紀夫没後50周年企画MISHIMA2020 『憂国(『死なない憂国』)』

マイクか、ずるだね、とちょっと思う。しかし当節、マイクを使う演劇はとても多いよね。 マイクを離さない東出昌大は飛ばす。『コンフィデンスマンJP』の「ぼくちゃん」が深化した形だ。集中力も十分、交番勤務の若い警官の「非番の時」になりきっている。 …

三島由紀夫没後50周年企画MISHIMA2020 『橋づくし』

――函(イレモノ)違い。と最初は思うのだ、特に芸者小弓(野口かおる)を筆頭に、女たちが舞台の周囲を、きいきい声の早回しで喋りあい、動き回るときには。なんだかとっても前衛で、日生劇場に合わないような気がしてしまう。 四人の女は願い事をかなえるた…

東京芸術劇場 プレイハウス 『ボクの穴、彼の穴。』

とってもいい話。原作のペン画は洒落ていて、舞台もスタイリッシュに仕上がっている。砂漠の穴の中に、一人置かれた兵士の孤独。心の変化。そして砂漠のどこかにもうひとつある敵の穴への恐怖、憎しみ。穴から覗く満天の星空もいい。照明も美しい。 まずいの…

下北沢 スズナリ 東京No.1親子 第2回公演 『夜鷹と夜警』

紙にエンボス加工。浅っ!というわけで、セットの鳥居が舞台に浅めに埋め込まれているように、この田舎町の市議会議員をめぐる芝居全体が、「現実」にエンボスみたいに埋め込まれている。但し、限りなく浅く。あまりにもエンボスが浅いので、全体が不鮮明で…

ケムリ研究室 no.1 『ベイジルタウンの女神』

ハイタウン(金持ちの街)の女社長マーガレット・ロイド(緒川たまき)は、ベイジルタウン(貧民の街)の再開発の権利を賭けて、乞食の多い貧民街へやって来る。素敵な服はぴりっと破られているけど、ちょっと浮世離れした彼女はそれほど気にしない。ベイジ…

TOHOシネマズ渋谷 『思い、思われ、ふり、ふられ』

ひとつ、とてもはっきり云えるのは、「私はこの映画に求められる観客層じゃない」ってことだ。 同時に森茉莉と妹の杏奴が(戦前かもしれない)、お涙頂戴の邦画を見に行っては互いの体を叩きながら笑ったという話も思い出す。 まず、これ映画なの?長いプロモ…

THEATRE1010 千住落語会vol.17 『春風亭一之輔 独演会 ~重陽に笑み栄ゆ~』

矢鱈縞っていうのか、茶や草色の縞の、狭い広いが思い思いになっている、落語にうってつけの渋い緞帳がかかってる。 ひと席おきにお客が座り、扇子をつかう男の人、女の人がちらちらし、ゆっくり又はせわしく風を送る。今日も暑い。もう9月9日、重陽の節句だ…

PARCO THEATER OPENING SERIES 『ゲルニカ』

(これがゲルニカ) 開幕前の赤い幕を眺め、血塗られたってこのことよ、と心に呟くのであった。照明の加減で上の方が不吉に黒みがかっている。きっと、栗山民也には「ゲルニカ」のモノトーンの中から、襲い掛かってくる兇暴な赤い色が見えたんだね。 元領主…

梅田芸術劇場×チャリングクロス劇場 共同プロデュース公演第1弾 『VIOLET』

1964年9月4日、田舎町のスプルースパインを出て、ヴァイオレット(唯月ふうか)はタルサのテレビ伝道師(畠中洋)の元へ向かう。それは長い旅だ。長距離バスグレイハウンドには、ヴァイオレットだけでなく、「それほどでもなかった人生」を打ち明ける老婦人…

KAKUTA 第29回公演 『ひとよ』

泣いちゃった。といいながら、全然話に入れなかったのである。まず、舞台は山の中のタクシー会社だ。「拘束時間は出庫点呼~帰庫点呼まで」などの貼り紙や疲れてぼやけた感じの流し、ありあわせの椅子を置いたテーブル、無線室と、もう欠けているのは火力の…

アソビル 『バンクシー展 天才か反逆者か』

マスクの下で鼻に皺を寄せる。 (ミッキーマウスやん) バンクシー展のとっつきは、本人の作業場と、黒いフードをかぶって思いに沈む男の顔のない人形が展示されているのだった。こんなに有名な無名の人見たことない。ネズミをくりぬいたステンシル型のボー…

テアトル新宿 『ソワレ』

村上虹郎が進歩していた。おれおれ詐欺の受け子をやり、分け前を受け取った後、上半身がこんにゃくのように不安定に揺れ、目線を定められず何度か切り替えるところ、自分に耐えられない、だるい、絶望ともいえない絶望が匂う。俳優として頭ごなしに駄目だし…

オフィス3◯◯ 「女々しき力プロジェクト~序章『消えなさいローラ』」

おんもしろかったー。と劇場を出、この『消えなさいローラ』がたった三日間しかやらないことを考えると、煌々と電信柱の明かりに照らされた侘しいアパートの一室が、あっと言う間に吹き飛ばされる砂の一粒のように思われてくるのだった。儚いねぇ。この芝居…

アップリンク渋谷 『8日で死んだ怪獣の12日の物語』

『スワロウテイル』(1996)以来、岩井俊二からは目をそらし続けてきた。あれ、かっこいい男の子と、すてきな女の子が、果てしなく誉めあうのを、じっと見ているような映画だったよね。凝ったセットとセンスいい映像を、やっと日本の人が作れるようになった…

アップリンク吉祥寺 『劇場』

「劇団おろか」。もうここで笑う。自分たちを「おろか」と名付けるセンスと、実際にその名の劇団があっても不思議ではない現実っぽさとの絶妙のバランスだ。そしてそっと差し出される悲劇喜劇の木下順二追悼号、載っているのは別役実の戯曲だった。大げさで…

TOHOシネマズ日本橋 『コンフィデンスマンJP プリンセス編』

『マスカレードホテル』に次ぐ怪作。フジテレビってさー、いっつもこんな映画作っているの。こんな映画でも、現場のスタッフと、現場の役者ががんばってて、会社もお金持ちだから、少々の駄作は気にならないの。わたしは仰天したよ。 ランカウィに行くお金が…

CUBE PRODUCE『PRE AFTER CORONA SHOW THE MOVIE』リーディングアクト『プラン変更~名探偵アラータ探偵、最後から7、8番目の冒険~』 

間隔をあけて並び、開場と同時に入り口前で手指の消毒、検温(カメラ)、靴裏消毒(マット)、チケット確認(係員一瞥)、ロビーにて自分で半券キリトリ、グッズ受け取る(グッズの中にフェイスガード)。 フェイスガード、うまく組み立てられるかとくらくら…

アップリンク クラウド 『わたしはロランス』

フレッド(スザンヌ・クレマン)。彼女に尽きる。ハシバミ色の眼はまるで流体だ。恋人ロランス(メルヴィル・プポー)をゲイと疑って悲しむときは深く徹った泉に見え、あれこれの重いトラブルに眼差しは沸騰する。秘密の旅を囁かれて瞳はちらりと左から右に…

アマゾンプライム 『ドリーム』

カメラはいつでも「写る人」を選んでいて、そこに「写らない人」のことを忘れさせる。西部劇には東洋人はいない。NASAの映像で黒人の人を見たことはなかった。しかし、フィドルの音色の中に胡弓の声をふと聴くことがあるように、『ドリーム』は、「写らない…

アマゾンプライム 『ロケットマン』

レジー・ドワイト少年はいい耳をしている。いったん聴いた音楽はすぐ再現することができる。母(ブライス・ダラス・ハワード)は彼を愛していない。父(スティーヴン・マッキントッシュ)は家庭に見向きもしない。レジーは王立音楽院に進み、ロックンロール…

アマゾンプライム 『グリーンブック』

2013年『それでも夜は明ける』。地面に爪先立ちになって動きつづけないと首に掛けられた縄で窒息してしまう罰、解放された主人公を追いかけて絶望の余り泣く女の奴隷。黒人による、奴隷を扱ったこの映画を見て、2013年まで黒人の目で語る奴隷制の映画を「ま…

アマゾンプライム 『わたしは、ダニエル・ブレイク』

大工のダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は心臓病で働けない。国から支援を受けようとするが、国はまるで何とかして補助するまいと決意しているかのようにダニエルを阻む。高齢のダニエルには、オンラインで書類に書き込みすることからして難しい。…