2020-01-01から1年間の記事一覧
「はい、円の面積はπrの二乗、この公式、先生が発見したんやったらよかったけどね」 と、つまらなそうに言う数学の先生がいたなあ。と思い出すビートルズのいなかった世界の物語『イエスタディ』。だあれもビートルズのことをおぼえていないのに、たった一人…
セルゲイ・ポルーニンの跳躍と回転を見て! 乱暴なくらいの勢いをつけて、空中に放り出された片足の中心で、残りの体が美しくデリケートに旋回してゆく。 このドキュメンタリーはホームビデオからテレビまで、いろんな映像を使ってダンサー=ポルーニンの足跡…
「移民を全員拘束して国外へ出す。18世紀末の流刑のように」こんなこと眉一つ動かさずいってのける政治家(イーノック・パウエル)に支持を表明するってどんなんだ。まあ、「自分の知っている場所」が変わってしまうというのは怖いものだ。恐怖。深い所から…
ええーそうだったのと、最後のインポーズを見てびっくりしている。ファントムの顔は半分見えなくて、見えるほうの半分にも細かい疵がぶつぶつとつけてあり、唇は斜めにめくれているのだ。張った声をよく聴けば分かったかもしれないけど、このファントムにこ…
絵筆がブリキ缶にあたる微かな音。曲がった腕で一人の女が絵を描いている。絵の具の色はつやつやと赤く、筆の先にたっぷりと溜まる。女の指の第二関節に、ターコイズグリーンの絵の具がくっついている。これ、夢の色だ。 『しあわせの絵の具』。うっげー。こ…
「うそくさい」 ピアノの前で、聴衆に向かってシーモア・バーンスタイン先生の紹介をするイーサン・ホークの声にケチをつけるのであった。 シーモア老人の声は、どこで何をしていようとピッチが変わらず、拍は緩やかで優しく、誰に対しても同じだ。これさ、…
3月28日、29日に池袋芸術劇場シアターイーストで行われるはずだったドラマリーディング公演が、ネットにあげられている。只なの?お金払うのに。芸術ちゃんと「補償」されてほしいよね。 いろいろおもしろかったんだけど、中では『鷗外の怪談』がすーごくよか…
「女の子」。 こうやってかぎかっこで括ると、なんか閉じ込められてる感じするよね。この映画の主人公小池則夫(中井貴一)にも「女の子」(森川葵=いまり)がいて、誰にも必要とされていない。この普通の女の子が、ばーん!意外な働きをするのだが、みてて…
セブンの前で、何故不良がしゃがんでいたかというと、それは何かのデモンストレーションでもプレゼンテーションでもなく、ただ、そういう風にしか座れなかったからである。体と心は、関係ないみたいだけど、関係してる。 三浦春馬の演じる「男」(The Man)…
勇者。古川健が母と娘の関係につっこんできた。 ねぇねぇ、仲よさそうに見えても、母と娘は大変なんだよー。母が「なんてすごいヒールなの」と言い、娘が「これくらい普通よ」と返したとしても、娘の心の手帳には裏抜けするくらい濃い文字で「呪われた。」と…
さんまが見つからん。手持ちのタブレットなんかでこじんまり観るからである。大きい画面で観なおすと、た易く彼は現れ、あっさりした大団円に拍子抜けしてもう一度頭から映画を辿る。 こんなもんじゃなかろー。 もっと大きい謎々が仕組まれているはず。何か…
京都だねーと、なぜか一見してわかる二重を組んだ舞台、階段に明かりがあたっている辺りを見るとどうやら赤いみたい。天井のサスにも赤い色が反射しているもん。それが京の橋と血塗られた幕末をすぐイメージさせる。二重の台は高さが揃っていて、死んだ人た…
知もあれば勇もある、情け深くて面白い、源平合戦の登場人物を、あっさり戦斗で死なせてしまった作家がいた。後々になって作家は言う、「あれを死なせるのではなかった。」物語はその人が生きてた方が数倍面白かったはずだけど、彼はどうしたことか生き長ら…
小池栄子優勝。小池栄子がテープを切らんとするその瞬間まで、隣を大泉洋が顎を振ってちらちら小池を見ながら力走する。 扁平の麦わら帽をかぶり、オレンジ赤のワンピースを着て路地を歩いてくるキヌ子(小池栄子)の美しさ。映画「おてんば娘の大冒険」の画…
綾ベン企画vol.14『川のほとりで3賢人』、前売り・当日4500円、初日と二日目16:00のみ特別料金4000円。 公演の前半、割引する若手劇団は多い。たぶん、芝居が固まってなかったりするからだろう。今回のこの割引は? …かたまってなかったね。全篇、味でなん…
いそがしやいそがしや、磯辺の石に腰かけて、心静かに糸を解くなり 縺れた凧糸、縺れた首飾り、縺れた刺繍糸、そういうのを年寄りの所に半泣きで持ち込むと、こう唱えて解いてくれたもんだった。 舞台の上にはバンカーズボックスに見える(アメリカ人が馘首…
X E L F A R C と、カメラの商標文字が裏返って反対。鏡の柱に向かって写真を撮るソール・ライターがいる。ソール・ライターは何気ない。(俺の写真さ。セルフ・ポートレートだよ。)襟がとんがって長い。はやりの綿シャツの胸の上にカメラを構え、ファイン…
深緑の古びた街灯と小さい木の椅子、舞台面は木の床が出ている。上手奥の登場口から、七十年代風に髪の長い女の人がギターを持って出て来て唄う。おー。気負いゼロ。淡々と「友達のお父さん」の歌を弾き語る。こんなに肩の力が抜けてて、こんなに世界と自分…
大きな劇場にかかっているのが、まざまざと見えるような作品だった。品もあるうえ、格も備わる。てがみ座の人々が懸命に頭上に支える『燦々』は、いつかふわっと浮き上がって飛び立ちそうになっている。 この再演(リブート?)版では主人公お栄(前田亜季)…
渡辺正行が「無理」と「我慢」のコーラの一気飲みを広めてからというもの、それは平凡な光景になったのかもしれない。 劇団民藝『白い花』では、主人公百合(中地美佐子)が、心の乱れを吹っ切るように、ラムネ三本を次々に一気飲みする。 ラムネ三本? 中地…
イケアのある町。といえば、イケアに行ったことある人なら想像つくと思うが、そういう町だ。大体、私にしてからが、香椎花園より先にある町が、目の端からこぼれちゃってるのであった。 うつむきながら鮮やかな青と黄色のイケア脇を寒々と通り抜け、カインズ…
スーパー歌舞伎初見(そういう人も珍しいと思う)。けど、スーパー歌舞伎をつくりだした猿翁、三代目猿之助がどんなに創意にあふれる人であるかというのは、観てない者でも知っている。例えば宙乗りは、むかし雑誌でめっちゃくちゃ貶されていたけど、当節、…
ラブ・コメかあ。ラブ・コメにはだいたい、ツンデレが必要ではないかと思うのだ。キャラクターの二重性というか、企みのようなもの。でも一方で、コメディはその場その場の台詞を心から真剣に言うことが求められる。ここ、むずかしいよね。企みと真面目。 昭…
8×8、64マスの小さなチェスボードを使った物語が、これほどスリリングになるとは思わなかった。特にソビエトのアナトリー(ラミン・カリムルー)が、アメリカに亡命した後タイトル防衛戦をするシーンはすごい。まるで人物にあたる照明の一つ一つが、生き…
彩の国さいたま芸術劇場の音楽ホール。一番後ろには補助席がずらっと並び、二階のバルコニーにも聴衆がたくさんいる。SOLD OUTらしい。人気の企画だ。だって平均律をチェンバロとパイプオルガンで弾き分けて、こんなに充実してるコンサートって、そうないと…
まず、「松竹新喜劇二月特別公演」のパンフレットの表紙が、すーごくかわいい。ゲームに出てくる小道具が、すべて和物、といった体(てい)。法被や扇やお城がならび、芝居に出てくる烏賊や章魚がキュートな点々の目を見開き、一つ一つの絵柄はオレンジ色の…
森新太郎演出で、がっつり稽古しましたという3時間15分。若い三浦涼介(=モーティマー)に、はっきりその効果が見て取れる。三浦の声は伸び、身ごなしは軽い。カンパニーの中で、一番いい声が出ていたと思う。だが、最初にメアリ・スチュアート(長谷川…
黄色に赤のストライプのコーンが4つ。舞台の上はイントレだの脚立だので雑然としている。空き瓶回収の折りたたみボックスもあちこちに点在する。コーンの片側には立ち入り禁止のバーがひっかけられているが、バーの反対側は迷子のように地面に斜めに降りて…
一瞬の爆笑のために、すべてを犠牲にする。というのが、わたしの明石家さんまのイメージだ。その場の大きな笑いがほしくて、見送ってしまったオファーや企画、実人生のあれこれが、いくつもいくつも灯ろうのように流れてゆくのが見える。きついな。だが、「…
足元が透けてる階段を、お上りくださいと言われたとたん軽いパニックに陥る高所恐怖症。東京フォーラムホールA、広い。 上手と下手のスクリーンに、AN EVENING WITH CYNTHIA ERIVOと読める。マシュー・モリソンと、三浦春馬の名前もある。場内にはサックスの…