2021-01-01から1年間の記事一覧
あれっ。そりゃあコロナかもしれないが、客席の真ん中から後ろを見て、3分の2くらいしか入ってないの、おかしいと思う。それくらい面白かった。 ブロードウェイチームと違うのは、やっぱ勢いだね。お祭りで売ってる四方八方へぴろぴろって舌が飛び出す紙の…
ジェーン・ラッセル、アステアと、15、6枚の額入り写真の飾られたシックなリハーサル室(録音ができ、ピアノや小さなカウチや、大きな机、木製レリーフの壁、木の切嵌めの模様など素晴らしい)がミュージカル全盛のハリウッドのお金持ちぶりを再現している…
万里の波濤を越え、二週間の退屈な待機に耐えて、インドよりもコロナの猖獗する国にやってきた異国の客人。初日の芝居を観るために、劇場の真ん中あたりに座を占めるウィル・タケットの、きりっと立てた背筋を見ながら、「異国」について忙しく考えるのだっ…
曠野である。ひとすじの風、空気を孕んだ何者か、または笛のような音がして、真っ赤な野の草をふと揺らす。 あっ にながわさん 一瞬空を見上げるような気持になり、「ここ」があの世とこの世の通路であることを感得する。赤い野原(曼珠沙華らしい、そう見え…
奴隷のミンティ(シンシア・エリヴォ)は自由黒人のジョン・タブマン(ザカリー・モモー)と結婚しているが、どうしても自由にはなれない。農場主が死に、売られることになったため逃亡を決意する。農場で虐待を受けた後、昏倒して眠る病気を持つ彼女は、牧…
メモ取りながらドリンク持つの無理。と早々に引き換えをあきらめ、上手後ろの隅っこに、リュック背負って立ってる。 アウェー。 だってあたし演劇部上がりの演劇班だもん。KERAが劇団立ち上げた時、どのくらいawayだったか、ちょっとだけ考える。 そよそよと…
舞台後ろに重なり混み合う無数の根っこ、上手から三分の一あたりにすきまがあるけれどそのすきまは思い切って暗く、そこに手でさわれない、見ることもできない、闇の根が張っているように感じられる。その根のあるところは津軽だということになっている。瞽…
一けた台の体脂肪率、鋭い目つき、早いパンチ、ボクサーを演じる東出昌大は、『聖の青春』の頃より三割増しでよくなっていると思う。どうしても試合に勝てない友人瓜田(松山ケンイチ)のノートを見て、「睫が濡れてるだけの」泣くシーンなど、センスもアッ…
神泉に向かう、八重桜の咲く道で、殺人事件の規制線が張られているのを見てから、もう24年かぁ。 大きな家具の下で縒れて波打ってる敷物みたいに、渋谷の街では様々なことが起こった。動かせない大きな家具的に渋谷には大小様々の建物が立ち、その下にある「…
奥に向かってきゅっと上がる平面の上には、たくさんの人が迷った動線のような跡がついていて、これはもう「急こう配の坂」だ。俳優たちはその上で、転がり落ちないように気を付けながら、足に力を入れて、命のやり取りをするのであった。坂の上は定規で引い…
カメレオン色の真実。カメレオン色って、何色なんだろ。幾重にも重なる額縁ごとに違う色が浮き出してきて、それが登場するおのおのにとっての「ほんとのこと」「うそ」なのだ。私の中ではこれはお屋敷に住む弟ルーファス(松下洸平)に収れんしていく物語だ…
まじかー。帝政ロシアの「どん底」生活の話を、1947年の東京に移しただけで、そのままやる?そして一番盛り上がる娘の叫びが省略?できる若い人は仕立て屋(齊藤尊史)と靴屋(本廣真吾)で、あとのメインキャストは年配の人ばかり?ちょっと、気を失いそうに…
桜姫、どんな人かと思っていたら、こんな人だったんだね。今まで本でしか知らなかった話が組み絵みたいに立ちあがってきて、極彩色で、わくわくした。 白菊丸(坂東玉三郎)と清玄(片岡仁左衛門)が花道をやってきて、白菊丸が優美にふんわり転ぶと、 (あ…
天を貫く遠い彼方からの視線が、「息子の死」を見、その死を手をつかねて傍観していた「自分」を見、敗け、失われてゆく「我ら」をみる。自分もまた、その天の非情のめぐりを知る大乱の物語。 2017年上演版の星空をもっとずっとかっこよくしたバージョンだけ…
わざと簡易に立てられたスクリーンの下手手前には、ビブラフォンアコーディオンピアノコントラバスがある。楽譜の上に光が当たり、四角い白さが際立っている。上手は「メトロポリス」に林立する塔のように見えるものが台上にいくつも並べられ、その円形の台…
逸脱、決められた枠から外れること、それが許されるのは、トブラー(森一)が億万長者だからだ。トブラーは貧乏人を装い、下男のヨハン(加藤頼)はトブラーに命じられて裕福な事業家を演じる。一方フリッツ・ハーゲドルン(田中孝宗)が家業の肉屋にもなら…
父親たちが、冬は都会へ出稼ぎに行き、夏はその失業手当をもらいながら本業の農作業に精を出すところ、日本のチベット、貧しい東北の寒村から一人の娘(小池栄子)が、東京へと集団就職で出て行った。美しさが仇をなし、娘は次第に場末の町に移り、職業も人…
鏡の中では、もうすでに現実は歪んでいる。 「間仕切り」の鏡が取られると、舞台の向こうにもう一つ客席があって、そこに演劇評論家のムーン(生田斗真)とバードブート(吉原光夫)がいる。そしていつからか、舞台の上の舞台にはちっとも動かない倒れた男(…
1曲目2曲目3曲目、椅子に腰かけギターを抱えた桑田佳祐はとても厳しい顔をして、こわい目つきで歌うのだ。ブルーノート東京、並んだテーブルに、キャンドルが無数に灯るのに、無人です。『桑田佳祐 静かな春の戯れ Live in Blue Note Tokyo』。これからこの…
悪評が大きすぎて、本人の実像がわかりにくくなっている作家、真杉静枝を、女だからと軽んじられ、外地うまれと蔑まれる一人の奮闘する人間としてえがく。でもまず、兄が戦死した中村地平(千賀功嗣)の台詞さー。「両親が落ち込んじゃってるんだ。」 ここ、…
コメディで呼吸(いき)を合わせるっていうのは、むずかしいもんだなと、それぞれの俳優の息の仕方を観察するのであった。 まず、出色だったのは堺小春だ。誰にも合わせず、自分の間合いで堂々と息をしている。一個人である。その結果、マッチングアプリでサ…
芝居の!ノリが!わかりにくい! 踏み出した右足に力が入らず、すぐに左足に踏みかえるみたいな、えーと、オフビートの微妙なノリなのに、それが観客に伝わるまでの時間が長すぎる。「じわじわ」すぎる。 ズッキーニ(辰巳雄大)は6才、事故に遭ったお母さん…
歌舞伎役者じゃない人が、「歌舞伎をなぞり、演じている」って、結局、どういうことなのかなー。と考える。歌舞伎の無二の型を、絶対的光明として近づく?正解を求める?そうじゃなかろ。「たったひとつ」を囲む無数のぶれ、幾百幾千の軌跡を追いかけるってこ…
打ち棄てられた工場、或いは廃屋に工事の赤色灯があって、黄色と黒の安全綱が上手から下手にいく筋か張られる。上と下、内と外、と思いつつ、マスクの下で(うーん)と唸る。まず市川猿之助が、パンフレットで杉原邦生を「君付け」でよんでるところで「ん?…
ぽん、と舞台に小さくスポットが当たり、芝居が終わる。拍手しながらぶわっと涙がこみ上げているのであった。よかったよ。お疲れさん。とか、私、あまい。この作劇は、あますぎるもん。 昭和25年、日本の敗戦から五年後の夏、一人の男の死を悼み、一団の男た…
「アレのせいで旗上げ以来はじめて本公演のない1年を経て」(チラシより)。 ねえ、その1年の間何をしていたの。もちろん生きるために働いたり、ショックだったり辛かったり大変だったりしたのだと思うけど、身体鍛えたり発声練習したり滑舌頑張ったりしなか…
んー?甲、乙、丙、三つのプログラムで一番落ちるかな。全体が、金輪タウンFMの持田喜美(瀧内公美)の司会する、金輪町節分祭になってるとこはいい。インタビューで「今年の鬼」として人物紹介されるスーパーコタヤ店長桜田文子(松岡依都美)が、『賽の…
梵字の大きく入った提灯が、小さい屋根のついた柱の下におさまり、おばけ提灯を連想する。「賽銭」と書いた箱と二人の人物が、上手(かみて)に照らし出される。 うさんくさい。笑う。真面目な顔をしている真田(大窪人衛)と古橋(盛隆二)は仏教の「研究」…
パリの心臓のすぐそばに、じめじめした湿っ地があって、その水気の多い泥の中から、ねじれたほそい茎を伸ばして白い花が咲く。――流しのピエレット・ドリオン、パリ1953年2月。 まるで湿気で湾曲したように見えるアコーディオンを肩にかけ、コードを押さえて…
劇場のなかは壺だと、客入れの音楽が言っている。壺の中。壺っぽい、どぉんとくぐもって響く音。下手にカウンターがあり、中央にテーブル、ダイニングチェアが三方向からテーブルに向いている。上手に北欧風のソファ、小さなソファテーブルがついていて、そ…