2023-01-01から1年間の記事一覧

世田谷パブリックシアター 『TSURUBE BANASHI 2023』

フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの『リラックス』が鳴ってる。鶴瓶のステージではスパッとした音楽がかかっていることが多いけど、今日は80年代前半の音楽らしい。あー。内省的なことがめっちゃ嫌われていた時代さー。生きづらかったー。さ、そんな…

THEATER MIRANO-Za 『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』

陰と陽、スクリーンに現れるキノコ雲は噴きあがり、ドライアイスのような白い煙は下へ下へと重たく降りてゆく。男と女、陽射しと暗闇、陰陽は相補って、互いが存在することで、自分自身の象(かたち)を明確にする。舞台には大きな「坂」があり(あのスケー…

TOHOシネマズシャンテ 『せかいのおきく』

『さまよえる人々』(1995、ヨス・ステリング)って映画あったよね。肥溜め出てくるから思い出しちゃった。あの中に出てくる肥溜めは、さむさと、何かしらの苦痛と、不潔さと腐敗と死と絶望が匂ったのに、こっちの『せかいのおきく』の肥溜めは、ぼうっとし…

新国立劇場小劇場 『エンジェルス・イン・アメリカ』第一部「ミレニアム迫る」第二部「ペレストロイカ」

棺が一つ舞台に置いてあり、房付きのビロードのような黒っぽい幕がかかってる。その脇にろうそくがぽつんと、白い芯をオレンジ色に透かして灯る。幕は案外と雑にかけられていて、次から次へと矢継ぎ早に死ぬ、たくさんの死者を思わせる。 わたしたちは棺の中…

配信 大人計画 ウーマンリブvol.15『もうがまんできない』

塔屋に落書きいっぱいのおんぼろビル(サウナとお笑いの劇場がある)と、最新のマンションが軒を接して建っている。そこにアナログ時計が一つ見え、「流れる時間は同一ですよ」と観客に教える。おんぼろビルの屋上では、出番を控えるお笑い芸人のコンビ(サ…

TOHOシネマズシャンテ 『オットーという男』

管理したい男、オットー(トム・ハンクス)。半年前に妻ソーニャ(レイチェル・ケラー)を失い、定年を迎え、その管理欲はいよいよ、怒りのこもった厳しいものになっていった。通りに入ってくる車に目を光らせ、落ちている紙くずをチェックし、ごみの分別に…

TOHOシネマズシャンテ  『ザ・ホエール』

この世の全てはぶれている。 多義的なのさ。死にかけているチャーリー(ブレンダン・フレイザー)は、272キロの巨体である。彼の「霊と肉」は揺れている。鯨を追うエイハブ船長なのか?鯨なのか?チャーリーの死んだ恋人の妹リズ(ホン・チャウ)は、彼を…

渋谷TOHO 『生きる LIVING』

走りまわるロンドンバス!真っ赤で二階建て!あっちへこっちへ動くバスに、一瞬目を閉じた。わたしもちょっと、「生きてない」かもなー。悲しいこと、辛いこと、疲れているとき、人は心の目を閉じがち。いちいち敏感に心を動かす(赤いバスのようにね…)のが…

鶴岡市立加茂水族館

鶴岡市立加茂水族館。年中無休9時から17時まで、最終入館16時、一般入館料1000円(団体900円)小中学生500円(団体450円)幼児無料。だがすべての情報が一歩入った途端消える。「クラゲアイス」。クラゲアイス?売店に並ぶアイスクリームに吸い寄せられる…

酒田市美術館 酒田市美術館特別展 『熊谷守一 いのちを描く』

「景色がありましょう。景色の中に生きもの、例へば牛でも何でも描いてあるとするのです。それが絵では何時でもそこに居るでせう。実際のものは、自然はそこにゐないでせう。その事の描けてゐる絵と描けてゐない絵とあると思ひます。あなたは此処にゐるが、…

小劇場 楽園 演劇ユニット「あやとり」第2回公演 『そこに、いる』

何度も何度も台本を読み返して推敲し、無駄なく芝居を立ち上げ、たくさん稽古したのがわかる。開演前のお客様への諸注意が、少し震える、遠くからの通信のように聞こえることからも、考え抜かれていることは明らかだ。どこかの星に、着陸した六人の男女は、…

東京ガーデンシアター BOB DYLAN『"ROUGH AND ROWDY WAYS" WORLD WIDE TOUR 2021-2024』

ううー。昨日(11日東京公演初日)、すっごい良かったらしいじゃないの。 何かの交響楽のしっぽが鳴って、バンドの全員がささっと舞台に上がり、何かひずんだおと、ボーカルなしで音を出す。そしてWatching The River Flow。ギザギザしてる。ボブ・ディラン…

PARCO劇場 PARCO劇場50th Anniversary 『ラビット・ホール』

三層に仕切ったたいへん理知的なセット、下手第一層はしゃれたダイニングでアイランドキッチンがあり、二層目は何か透明の通路と、棚とカップボードの部屋が見え、一層目と三層目をぱっと見、ケージのような階段がつないでいる。このセットの意味合いが、な…

新宿ピカデリー 『仕掛人・藤枝梅安 第二作』

映画の「天」「地」を、豊川悦司の演じる梅安が、よく支えている。小細工しない。大らかに立っている。成長したねえ。 その代わりと言っちゃなんだが、あとはいろいろテレビっぽい。これテレビ局の企画だよね。菅野美穂の前半の表情が動きすぎで、片岡愛之助…

五島美術館 『春の優品展 古今和歌集を愛でる』

手習いしたことない。硯洗うのだいきらい。そんな人が、上野毛駅徒歩5分、界隈の家々がゆったり建つ、五島美術館に来ました。ウグイスが鳴いている。しずか。今日の美術館の特集は、『春の優品展 古今和歌集を愛でる』だよ。書だねぇ。 まずね、作品が傷ま…

アップリンク吉祥寺 『THE FIRST SLAM DUNK』

「スラム」「ダンク」ってなんですか?…そこからです。バスケットのわっかにジャンプしてボールを叩き込むことを言うんですね。ダンクシュート!って呼ばれてるやつですね。この映画の中には、主人公リョータ(声:仲村宗吾)たちの湘北高校と、秋田の山王工…

アップリンク吉祥寺 『コンペティション』

おっそろしく自分「に」ピントの合った人たちが、自分「の」ピントを合わせるべく、戦う映画である。大金持ちの老人スアレス(ホセ・ルイス・ゴメス)は、自分の名を後世に残すため、映画制作を思い立つ。いま旬の映画監督ローラ(ペネロペ・クルス)に監督…

紀伊國屋サザンシアター オールナイトニッポン55周年記念公演 『たぶんこれ銀河鉄道の夜 ~The Night of the Milky Way Train(right?)~』

上田誠によって、宮沢賢治の文章がうたわれる。きれいに、いい感じに、またはラップをうまく使い、ちっともいやではない。しかし、家に帰って手を洗いながら、「赤い目玉のさそり~」と、宮沢賢治作詞作曲の星めぐりの歌を歌うと、今日見てきた芝居がとんじ…

東急シアターオーブ ミュージカル『マチルダ』

世の中にうすーく広がる、「こどもってやっかい」という空気。主人公マチルダ(三上野乃花)は、その、こどもを覆う気配(世界中の子供が、実はそれに気が付いている)と戦う。 マチルダを「ぼうず」と呼び、厄介者の最低な奴と扱う父ミスター・ワームウッド…

東京芸術劇場シアターイースト 『カスパー』

「統一と正義と自由」「我らは皆で兄弟のごとく」、というようなフレーズを持つドイツの歌——ドイツ国歌が、傷だらけのSP盤から流れてくる。動けない病気の子のような、清らかな視線を持つカスパー(寛一郎)は、カスパーたち、あるいは黒衣たち(王下貴司、…

PARCO劇場 PARCO劇場50th Anniversary シリーズ PARCO PRODUCE 2023  ミュージカル『おとこたち』

ジャンル負けしてる。ミュージカルの海は広く、深いねえ。熱い紅茶に角砂糖を入れると、あっという間にほろほろ崩れるように、2014年に観たストレートプレイ『おとこたち』のいいところが、さぁっと溶けてしまう。うーん、前半、鈴木(吉原光夫)の世界への…

シアター風姿花伝 パラドックス定数 第48項 『四兄弟』

四兄弟は、暴虐の父をころすことで、隷属の苦しい状態から抜け出る。最初は暴力、その暴力を否定することはできない。ソビエト。共産主義。レーニン。あっそうかふーんと発見があり、そこが目からうろこ。レーニンやスターリンやフルシチョフは暴力から生ま…

東京建物Brillia HALL 2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演 Shinkansen faces Shakespear 『ミナト町純情オセロ 月がとっても慕情篇』

パラレルな感じ?シェークスピアと映画みたいな50年代と、こちらから眺める現代とが、悲劇の起こる「島」の周りを三重に、見えない線でぐるぐる巻きにする、沙鷗組の亡くなった組長の妻(アイ子=高田聖子)が、イアゴーと同じくらい非道い奸計をめぐらし、オ…

明治座 明治座創業150周年記念前月祭 『大逆転!大江戸桜誉賑 だいぎゃくてん!おおえどかーにばる』

松平健の、体幹はしっかりしてて安定してる。はー、腰がキマッテルってこれね。と思う。どんな俳優でも、たとえ鶴田浩二でも、腰のキマらないひとは映画で「いい者」に映らない。けどさー、今日松平健は、目測を誤って、カラミに刀を当ててしまった。(あっ…

渋谷TOHO 『Winny』

俳優に水洩れがない。皆集中し、きっちりこなす。画面手前に映りこむ、脇役の少壮弁護士浜崎(和田正人)の、パソコン画面を畳む手つきすら充実している。すごいなー。ポッキーを食べるプログラム開発者の主人公金子勇(東出昌大)、法律用語を台詞の地模様…

KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉 KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『蜘蛛巣城』

蜘蛛の巣にかかった男や女。黒澤明がなぜ自分のマクベスにその名をつけたかよくわかった。夢、野望、功名、どんな動機でも、蜘蛛の巣に魅了され、虜になったものは逃げられない。昏い運命に捕食されるのを待つ。そしてまた、人々を喰らう運命は、脆く儚く、…

TOHOシネマズ渋谷 『フェイブルマンズ』

サム(ガブリエル・ラベル)の母ミッツィ・フェイブルマン(ミシェル・ウィリアムズ)が笑いながら、戯れに葉をつけた若木につかまり、木は左右に大きく反って撓む。あれ、サム――スティーブン・スピルバーグだと思うのだ。折れそうな程傷められる少年。後半…

TOHOシネマズ渋谷 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

エヴリン・ワン(ミシェル・ヨー)は夫のウェイランド(キー・ホイ・クァン)と共におんぼろなコインランドリーを経営している。税金に監査が入り、彼女は自分の申告を見直さなければならない。経費には「カラオケセット」がのん気に計上されている。(交際…

ザ・スズナリ NYLON 100℃ 48th Session 『Don't Freak Out』

家父長制を哄笑するおんなたち。 『砂の女』のあの男は、砂の中に閉じ込められる一方、居心地の良い巣穴で、「女」に世話され、一人で過ごす自由を得た。彼は「お世話」を疑わない。『Don’t Freak Out』の父天房征太郎(みのすけ)は、女中部屋から地下に降…

キノシネマ天神 『銀平町シネマブルース』

映画1000本みてるボーイズクラブの映画。って思っちゃったよ。主人公の猛(小出恵介)は無職で、ホームレスの佐藤(宇野祥平)と大変近い境涯の人として登場する。底辺への畏怖とシンパシーを、「映画を見ること」が支えてくれる。猛はカルトで知られる映画…