シアタートラム 劇団チョコレートケーキ 『ブラウン管より愛をこめて ー宇宙人と異邦人ー 』

今日、この芝居初日。特撮ヒーロー番組を作っている「東特プロ」の制作、岸本次郎(林竜三)の第一声が、「東特プロの世界」を召喚するのに失敗してました。ここからしばらく、芝居がすんごいぎこちなかった。それは衣装のせいもある。80年代後半から90…

座・高円寺 チーズtheater第七回本公演『ある風景』

チケット売り場前の、小さいお知らせ看板に、びんびん反響するスタッフの声を聴いた時から、悪い予感はしていた。この演出の人、聴覚に繊細さを欠く。さーさーという音は「雨」ではなく、「雨の体(てい)」だったし、俳優が舞台から姿を消しているとき聞こ…

新橋演舞場 熱海五郎一座新橋演舞場シリーズ第9弾 『幕末ドラゴン クセ強オンナと時をかけない男たち』

まず、「とにかく明るい安村 安心してください」で検索。そこからだよ。なんにも知らないんだもん私。イギリスの人と一緒。 幕が開いてからの坂本龍馬(東貴博)の台詞が、おりょう(檀れい)のことを言っているのか、それともうっすらした未来の記憶なのか…

歌舞伎座 『六月大歌舞伎』義経千本桜

今日の仁左衛門は、「いがみの権太」。ゆすりたかりで日銭を稼ぐ小悪党だ。でも黙阿弥みたいなピカレスクロマンではない。「いがみの権太」を家庭生活から照射する、ちょっと変則な、江戸時代の作品じゃないみたいな役なのだ。つまり、仁左衛門が、この役を…

東京芸術劇場プレイハウス NODA・MAP第26回公演 『兎、波を走る』

雲散霧消。人物の一人一人、出来事の一つ一つが、VRを覗くのをやめた人みたいに(のぞいたことはないのだった…)全部消えてしまう。 すべてはヴァーチャルだ。ということは、実は、すべてが現実なのかもしれない。1960年代、盛り上がった「つよがり、思…

博多座 『六月博多座大歌舞伎』2023 夜の部

船乗り込みは大盛況だったと聞くのに、水曜夜の博多座客席はちょっと寂しい。福岡の人、わかっとうかなー。東京と福岡は、1000キロ離れている。1000キロ離れたところで歌舞伎が2週間興行する。すごくない?お金のある役所の偉い人とか、全員こなきゃダメでし…

新国立劇場小劇場 シリーズ未来につなぐもの 『楽園』 

うちの近所のお地蔵さんに頭を下げる人が年々増えてるのを見るにつけ、なんだろ、目には見えないもやもやした網、「従順」や「奉仕」をひたひたと要求してくるものを感じてひゃあーとビビっているのだが、いまのところだれもそれを気にしてないみたい。たと…

アマゾンプライム 東映創立70周年記念作品 『THE LEGEND &BUTTERFLY レジェンド&バタフライ』

木村拓哉、『ター』観たかなあ。ケイト・ブランシェットの、総身を「ター」に捧げる役作り、冒頭、ただ出番を待ってるだけなのに、緊張した顔つきが様々に変わるとことか凄いよね。あんまり顔を他人から注視されていると――アイドルってそうだと思うけど――人…

明治座 『水谷千重子50周年記念公演 大江戸混戦物語 NINJAR ZONE』

「水谷千重子50周年記念公演」のパンフレットの最初のご挨拶は、「水谷とたった二人で創業した」社長のそれから始まり、正体を匂わしたり決してしない。「水谷千重子を生きる者」が、どれだけ強い意志でそれを貫き徹そうとしているか、容易に想像できる。な…

国立劇場 初代国立劇場さよなら公演六月歌舞伎鑑賞教室 『日本振袖始 一幕 八岐大蛇と素戔嗚尊』

30年以上前、歌舞伎を研修で観にいった家族は、いまでもいうのだ、「団十郎って、さすが市川宗家なんだよな、りっぱなもんだった」。それからしょっちゅう歌舞伎観てるかっていえばそんなことないけど、「りっぱだった」って絶対言う。「若い時に一回歌舞伎…

TOHOシネマズ日本橋 『TAR ター』

あのー、クレヨンみたいな油性の、太い芯の色鉛筆あるでしょ?芯の周りは紙で支えられてて、ミシン目のとこを糸で引っ張ってぐるぐるっと紙をはがし、芯を出すやつ。『TAR』を見て、私、あの色鉛筆を思い出した。 子供たちの声の中から――鳥の声の中から、知…

紀伊國屋ホール 秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場 第130回公演『老いらくの恋—農の明日へ』

「老いらくの恋」「農の明日へ」…題名が、割れてるよね?前者は農家の老年の男農夫也(のぶや=葛西和雄)が虜になり、昼夜分かたず夢中になっているものや、彼の日常生活を語り、後者は「農業」について、その国内自給率が均して38パーセントであることを…

世田谷パブリックシアター 『ART』

マルク(イッセー尾形)は航空エンジニア、セルジュ(小日向文世)は皮膚科医、イヴァン(大泉洋)は文房具の会社に勤めてる。これさ、いつかは破綻が来る友情だったのかもね。エンジニアは「内部」を扱い、皮膚科医は「表面」を専門とする。以前は繊維を、…

新宿・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 劇団民藝『カストリ・エレジー』 

えー、これ30年前に、鐘下辰男が書いた作品?ちょうどそのころ、ゲイリー・シニーズとジョン・マルコビッチの、『二十日鼠と人間』観たなあ。スタインベックの原作に、鐘下が付け加える人間の複雑さ(戦争で日本人の負った傷、負わせたことでまた負う傷)が…

東京都美術館 『マティス展』

アンリ・マティス(1869―1954)のごく初期の伝統的な筆致の絵、『読書する女性』(1895)は、作家26歳の作品だけど、さあっと国に買い上げられている。戸棚の上の白いランプ様のもの、ぼんやりした聖像らしきもの、茶の小さな瓶、鮮やかな緑のちょっとアンフ…

東京建物 Brillia HALL 『BACKBEAT』

初期ビートルズの一員スチュアート・サトクリフ(戸塚祥太)の恋人アストリッド(愛加あゆ)が、なんかいまいちつまらない女の人に作られたまま放置されているのは、これ演出(石丸さち子)の意図なのかな。スチュとアストリッドの愛は、フェイクにすぎない…

世田谷パブリックシアター インバル・ピント『Living Room』

こないだうち、一生懸命テレビ版を見ていた『エヴァンゲリオン』というのは、少年の悪夢のような第二次性徴期を、克明に描くものだった。インバル・ピントの新作『Living Room』は、その少女篇、ていうか、ガールズエヴァンゲリオンみたいだったなあ。エヴァ…

新宿バルト9 『静かなるドン』

ヤクザ映画、キョーミなし。マンガも映像も全く見たことなくて、ごめんね。現代日本でヤクザ映画無視して生きてきた、そのこと自体私が社会と関係なかったことを表している。役職順に並んで昼食から帰ってくる会社員を、ばかばかしいと笑えない、つらい男の…

シアタートラム イキウメ『人魂を届けに』

「人魂」みたいな芝居よねー。深山幽谷、どこだか知れない森の奥に、山鳥さん(篠井英介)は棲んでいる。「おかあさん」と呼ばれる彼女の家の中には、男たちが、点々と胎児のように眠りながら「落ちている」。そこへ、死刑を与えられて死んだはずの男の「魂…

紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA 『KOKAMI@network vol.19 ウィングレス 翼を持たぬ天使』

一人の天使(榊原一郎=福田悠太)が女(絹田玲菜=大野いと)に惚れ、人間として地上に降りる。女に振られた天使は、また天上に戻ろうと、人を本当の意味で救うため奮闘し、スピリチュアル団体の神の声を名乗る男(神山英雄=渡辺いっけい)と敵対する。…こ…

世田谷パブリックシアター 『TSURUBE BANASHI 2023』

フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの『リラックス』が鳴ってる。鶴瓶のステージではスパッとした音楽がかかっていることが多いけど、今日は80年代前半の音楽らしい。あー。内省的なことがめっちゃ嫌われていた時代さー。生きづらかったー。さ、そんな…

THEATER MIRANO-Za 『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』

陰と陽、スクリーンに現れるキノコ雲は噴きあがり、ドライアイスのような白い煙は下へ下へと重たく降りてゆく。男と女、陽射しと暗闇、陰陽は相補って、互いが存在することで、自分自身の象(かたち)を明確にする。舞台には大きな「坂」があり(あのスケー…

TOHOシネマズシャンテ 『せかいのおきく』

『さまよえる人々』(1995、ヨス・ステリング)って映画あったよね。肥溜め出てくるから思い出しちゃった。あの中に出てくる肥溜めは、さむさと、何かしらの苦痛と、不潔さと腐敗と死と絶望が匂ったのに、こっちの『せかいのおきく』の肥溜めは、ぼうっとし…

新国立劇場小劇場 『エンジェルス・イン・アメリカ』第一部「ミレニアム迫る」第二部「ペレストロイカ」

棺が一つ舞台に置いてあり、房付きのビロードのような黒っぽい幕がかかってる。その脇にろうそくがぽつんと、白い芯をオレンジ色に透かして灯る。幕は案外と雑にかけられていて、次から次へと矢継ぎ早に死ぬ、たくさんの死者を思わせる。 わたしたちは棺の中…

配信 大人計画 ウーマンリブvol.15『もうがまんできない』

塔屋に落書きいっぱいのおんぼろビル(サウナとお笑いの劇場がある)と、最新のマンションが軒を接して建っている。そこにアナログ時計が一つ見え、「流れる時間は同一ですよ」と観客に教える。おんぼろビルの屋上では、出番を控えるお笑い芸人のコンビ(サ…

TOHOシネマズシャンテ 『オットーという男』

管理したい男、オットー(トム・ハンクス)。半年前に妻ソーニャ(レイチェル・ケラー)を失い、定年を迎え、その管理欲はいよいよ、怒りのこもった厳しいものになっていった。通りに入ってくる車に目を光らせ、落ちている紙くずをチェックし、ごみの分別に…

TOHOシネマズシャンテ  『ザ・ホエール』

この世の全てはぶれている。 多義的なのさ。死にかけているチャーリー(ブレンダン・フレイザー)は、272キロの巨体である。彼の「霊と肉」は揺れている。鯨を追うエイハブ船長なのか?鯨なのか?チャーリーの死んだ恋人の妹リズ(ホン・チャウ)は、彼を…

渋谷TOHO 『生きる LIVING』

走りまわるロンドンバス!真っ赤で二階建て!あっちへこっちへ動くバスに、一瞬目を閉じた。わたしもちょっと、「生きてない」かもなー。悲しいこと、辛いこと、疲れているとき、人は心の目を閉じがち。いちいち敏感に心を動かす(赤いバスのようにね…)のが…

鶴岡市立加茂水族館

鶴岡市立加茂水族館。年中無休9時から17時まで、最終入館16時、一般入館料1000円(団体900円)小中学生500円(団体450円)幼児無料。だがすべての情報が一歩入った途端消える。「クラゲアイス」。クラゲアイス?売店に並ぶアイスクリームに吸い寄せられる…

酒田市美術館 酒田市美術館特別展 『熊谷守一 いのちを描く』

「景色がありましょう。景色の中に生きもの、例へば牛でも何でも描いてあるとするのです。それが絵では何時でもそこに居るでせう。実際のものは、自然はそこにゐないでせう。その事の描けてゐる絵と描けてゐない絵とあると思ひます。あなたは此処にゐるが、…